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侍ジャパン、金メダルまであと2勝! “五輪のラッキーボーイ”甲斐拓也だけでない、次々に逆転勝利できる理由<準決勝は韓国戦>
posted2021/08/03 12:40
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Masaki Fujioka/JMPA
またこの男だ。
激闘の米国戦。タイブレークにもつれ込んだ延長10回裏。決着をつけたのは、この五輪の“ラッキーボーイ”甲斐拓也捕手(ソフトバンク)のバットだった。
「打ってもいいですか?」
稲葉篤紀監督にこう直訴した。
延長10回のタイブレークは無死一、二塁からスタート。まず仕掛けたのは日本ベンチだ。
8番の村上宗隆内野手(ヤクルト)に代えて代打に栗原陵矢外野手(ソフトバンク)を“ピンチバンター”として起用。その栗原がマウンドのE・ジャクソンの初球をきっちり一塁側に転がして走者を二、三塁に進めた。
「『打て!』のサインというか、打ってもらいました」
今度は米国ベンチが動く。
マイク・ソーシア監督が野手を集め、中堅を守っていたJ・ロペス外野手がグラブを変えて二遊間、二塁ベースの三塁よりへと入る内野手5人シフトを敢行した。
そこで打席に入ったのが甲斐だった。
初戦のドミニカ共和国戦では土壇場の9回にセーフティースクイズを決め、2戦目のメキシコ戦では1点を先行された直後に同点タイムリーでチームの流れを引き寄せた男だ。
「内野ゴロ、スクイズ警戒というシチュエーション。あそこは打たせようということで『打て!』のサインというか、打ってもらいました」
打席に入る直前の直訴を受け入れる形で指揮官も甲斐のバットに託し、それに甲斐も応えた。