プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「メカニックを最低限、戦える状態にできた」侍ジャパンの“切り札”千賀滉大は、なぜ見事に復活できたのか?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/03 11:30
2回5奪三振の快投を見せた千賀
「オリンピックのマウンドとか、そういうことを考える余裕はあまりなくて、チームが1点差に迫ったところだったので、とにかくゼロで帰ってもう1回流れを作るくらいの気持ちでした」
激しいゲームの流れをピタッと止めた
その言葉通りだ。この千賀の快投が点の取り合いだった激しいゲームの流れをピタッと止めた。そうして1点差のままゲームが止まったことが、結局は土壇場での同点劇、そして最後のサヨナラの幕切れを作り出したことは紛れもない事実だった。
そういう意味ではこの千賀から山崎康晃投手(DeNA)、大野雄大投手(中日)と繋いでタイブレークの10回を無失点で切り抜けた栗林へと繋がるリリーフ陣の投球こそが、この勝利の最大のポイントでもあった訳である。
しかも日本代表にとっては白星ばかりか、この先の準決勝と決勝に向けて、大きな収穫を得た試合でもある。
大会直前の強化試合でも調子は上がらないまま
そうあの千賀が戻ってきたことが、何よりチームにとっては大きな意味があることだった。
開幕直後の左足首靭帯損傷で出遅れた今季。千賀の侍ジャパン入りは絶望的と見られていたが、代表を辞退した巨人の菅野智之投手と中川皓太投手の代替メンバーとして伊藤大海投手(日本ハム)と共に滑り込みでメンバーに入った。
しかし代表招集決定直後の一軍登板で自己ワーストの3回途中10失点。7月19日から始まった直前合宿でも状態が上がらないままに、7月24日の楽天との強化試合も2回を投げて4安打2失点という内容。そのまま本大会へと突入したために、オープニングラウンド2試合は出番もないまま終わってしまった。