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梅崎司(34)にとって『トリニータ』はなぜ“特別”なのか…家庭内暴力に苦しんだ幼少期、15歳で誓った「サッカーでお金を稼ぐ」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byOITA F.C.
posted2021/07/27 11:01
プロのキャリアをスタートさせた大分トリニータへ復帰を決めたMF梅崎司。過酷な家庭環境の苦しみから救ってくれた原点とも言えるクラブだ
「トリニータは僕が移籍してから13年半の間、ナビスコ杯優勝、J2降格、J1復帰、再びJ2降格をして、J3降格まで味わいました。クラブ経営も危ういところがあったのに、片野坂さんがチームを新しく作り直し、J2、J1と這い上がってきた。こうした苦労と努力を重ねた上で今がある。クラブやサポーターが味わってきた苦しさの真実は僕にはわからない。
でも、そういういろんな人たちの思いと努力があったからこそ、今もJ1で戦えているのだろうし、クラウドファンディングでサポーターやスポンサーの皆さんが支えてくれたからこそ、再びこの青いユニフォームを着ることができたと思っています」
現在、大分の順位は降格圏内の19位。残留のためには順位をあと3つ以上押し上げる必要がある。その経験と情熱でチームを力強く牽引する存在――梅崎は「残留のための切り札」として期待されている。
ガムシャラにプロの道を切り開いていったあの時のように、梅崎の目はギラついている。
「やるべきことはただ1つでチームを残留させること。正直、ここでの契約期間にどっぷりつかるんではなくて、この半年が全てだと思っています。まずは自分が躍動して、自分が発する言葉に重みや信憑性をもたらさないといけないし、その上で選手としてチームの先頭に立ちたいなと思っています。この半年できちんと存在理由を示さないと僕の選手としての未来はない。プロキャリアを自分で縮めてしまうのではないか、終わらせてしまうのではないかという領域に足を踏み入れた感覚です。どういう結末が待っているか分かりませんが、花開かせるために全力で挑みたい。だから、安堵感は一切ありません」
14年ぶりの「ただいま」は、結果という形で伝えたい。その強い意志が実った時、大分サポーターの心からの「おかえり」が彼の心に響き渡るだろう。
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