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梅崎司(34)にとって『トリニータ』はなぜ“特別”なのか…家庭内暴力に苦しんだ幼少期、15歳で誓った「サッカーでお金を稼ぐ」
posted2021/07/27 11:01
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
OITA F.C.
東京五輪開幕を控えた7月17日、Jリーグファンを秘かにざわつかせた移籍発表があった。
湘南ベルマーレの34歳、MF梅崎司が古巣・大分トリニータへの完全移籍を発表した。
梅崎にとって「トリニータ」は特別なクラブである。大分U-18からトップ昇格し、グルノーブル(フランス)でプレーをした半年間を除いてトップチームでは2年半プレー。14年ぶりの復帰とあって、大分サポーターからは「おかえり」や「この日を待っていた」という声がTwitterで飛び交った。20日に行われた入団会見でも、地元記者から温かい声が掛けられた。
そんな歓迎ムードだったから、梅崎は会見では穏やかな表情を浮かべていた。しかし、その翌日に行われたインタビューでは、まるで別人のような、覚悟を感じさせる目が印象的だった。
「安堵感はない。むしろ逆で」
「会見では『(大分に戻ってきて)ホッとしましたか?』といった質問がありましたが、本音を言うと、大分に戻ってきた安堵感は一切ありません。むしろその逆で、大きな使命感とプレッシャーを感じています」
今季、湘南ではなかなか出番を掴めなかった。リーグ戦ではわずか2試合の途中出場に留まり、カップ戦の出場がメイン。それでも湘南からは来季の契約延長の話をもらっていた。だが、出場機会を求める梅崎はJ2クラブからのオファーに頭を悩ませていると、そこに大分からもオファーが届いた。
「大分から話が来るとは思わなかった。でも、片野坂(知宏)監督から『司が持っているアイデア、展開力、ゴールに向かう姿勢を発揮してほしい。若い選手の見本となってチームを引っ張っていくリーダーシップを期待している』という言葉を頂き、さらに西山哲平さん(GM)からも熱意を凄く感じた。『いつか戻りたい』と思っていた大分からのオファーには物凄く揺れ動きました」
大分からオファーをもらってからの3日間、梅崎の心は揺れ続けた。