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偏差値76超え東大医学生に聞く“なぜ体育会サッカー部に?”「ずっと勉強をやってきた僕が挑戦できるって…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2021/07/30 11:02
東京大学運動会サッカー部唯一の医学部生・内田龍吾選手。医学部にもサッカー部があるなかで、なぜ彼は“体育会”を選んだのか
「周囲のレベルが高くて……。これじゃ通用しないと思って、練習前の授業中や早めに勉強を終わらせて、ひたすらサッカーの動画を見ていました。気持ちを作ってサッカーに頭を切り替えたかったんです」
授業は、月曜から金曜まで終日びっしりと詰まっていて、理系なので課題なども多い。3年になった今は実習が入るようになり、金曜日の昼練はそのために参加できない時もある。ただでさえ優秀な学生が集まる医学部で、文武両道を貫くのは簡単ではない。
「2年の夏に『進振り』といって前期の成績で学部を決める時期がくるんですけど、その時は無事に医学部へ進めました(笑)。今、勉強では周りの人に先に行かれている感がかなりあります。みんな、勉強熱心ですから」
勉強には焦りを感じることもあるようだが、サッカーはあと1年半しかプレーできる時間がない。医学部は6年生まであるので、ルール的には6年間プレーできるそうだが、4年での卒部を予定している。5、6年はグループで各科を回る臨床実習や国家試験に向けての準備もあり、内田選手自身も「勉強したい」と思っているからだ。
サッカーに打ち込めるタイムリミットが迫っているなか、林陵平監督が就任した。内田選手は昨年より個人に寄ったメニューが増えたが、その変化をどう感じているのだろうか。
将来は医者だけど「怪我とかはまったく気にしてないですね」
「今年は1部なので、相手の技術、フィジカルが上がっています。そこに対応するために必要な練習なんだと思っています。相手に負けないフィジカルの土台はしっかり作っていかないといけない」
内田選手のポジションはセンターバック、サイドバック。守備が中心でフィジカルコンタクトや対人プレーが多く、ケガや故障の可能性も高い。サッカーをやっていて避けられないリスクだが、内田選手の将来は医者だ。手術となれば繊細な手の動き、視力も重要になる。医学系のクラブのレベルが落ちるのは運動能力の違いもあるが、怪我予防で考えてガチンコより楽しむことを主体としていることも多い。一方で、体育会は常にガチンコ勝負になる。