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「私が見てきた中で最も結束力が」アーセナルOBが“ココだけに書くイングランド躍進の理由” EURO序盤はイマイチ評価も…
text by
エイドリアン・クラークAdrian Clarke
photograph byREUTERS/AFLO
posted2021/07/11 17:04
イングランドの躍進に壁画も描かれた。フットボールの母国に最高のエンディングは訪れるか
一方の攻撃は縦に速いサッカーを基本形としているため、両翼にはスピードに長ける選手(スターリングとサカ)を起用する傾向が強い。最初から飛ばしていくことはなく、キックオフ時から派手で厚みのある攻撃を奏でることは少ないが、その分、しぶとさがあり、守備の隙も少ない。それが、今回のイングランド代表の特徴と言えよう。
「黄金世代」と謳われた2000年代にはスティーブン・ジェラードとフランク・ランパードをいかに共存させるかなど、どうやって自慢のタレントを生かすかに重点が置かれていた。だが、サウスゲート体制では「チームありき」の精神が貫かれている。
グリーリッシュの「OK」と人心掌握術の巧みさ
もうひとつ、個人的に注目しているのが、指揮官のマン・マネージメントだ。
先述したようにアタッカー陣は豪華タレントを擁し、ベンチメンバーのレベルは今大会最高にある。だが、ベンチに座り続ける選手たちのモチベーションをいかに維持させるか。ここも、指揮官にとって悩ましい問題だ。
象徴的だったのは、準々決勝のウクライナ戦でのワンシーン。英国民の人気が高いグリーリッシュはこの試合で最後まで出番がなかったが、終了のホイッスルが鳴ると、サウスゲートはそっと彼に歩み寄った。25歳の司令塔の肩を抱き、起用できなかった理由を耳元で囁いていた。グリーリッシュは納得の表情を見せ、うなずきながら「OK」と返事をしていた。
元選手の立場から言えば、こうした気遣いはプレーヤーにとって本当に有り難い。次戦に向けて、万全の準備をしよう──。そう強く思えるものだ。そのせいか、今回のイングランド代表には強い結束力が感じられる。サウスゲートは選手一人ひとりと真摯に向き合い、選手たちも指揮官に忠誠心を示している。少なくとも、私が見てきた世代のイングランド代表の中では、結束力が最もあるチームだ。
エースのケインで印象に残った場面とは
最後に、代表のエースであるケインについて触れておきたい。