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「私が見てきた中で最も結束力が」アーセナルOBが“ココだけに書くイングランド躍進の理由” EURO序盤はイマイチ評価も…
text by
エイドリアン・クラークAdrian Clarke
photograph byREUTERS/AFLO
posted2021/07/11 17:04
イングランドの躍進に壁画も描かれた。フットボールの母国に最高のエンディングは訪れるか
エースのハリー・ケインを始め、スターリング、メイソン・マウント、マーカス・ラッシュフォード、フィル・フォデン、ブカヨ・サカ、ジェイドン・サンチョ、ジャック・グリーリッシュといった、所属クラブで主力を張る錚々たるアタッカーを擁している。しかしながら、指揮官は守備に重きを置き、チームのバランスが前掛かりになることを嫌った。ディフェンダー出身のサウスゲートは、とにかく用心深い。
その結果、攻撃は単調で、淡白そのものになった。クロアチアとチェコには1-0の最少得点で勝利し、スコットランド戦はスコアレスドローで終えた。3試合を無失点で抑えたことは評価できるが、わずか2得点だったことには小さくない疑問符がついた。
「失点しない、負けない」というデザイン
しかし、55年ぶりの決勝進出を果たした功績から評すれば、指揮官の慎重なアプローチが躍進の要因になったのは間違いない。
このチームは、まず「失点しないこと」、そして「負けないこと」に重きが置かれている。守備を重視しながら、慎重に試合を進めるようデザインされているのだ。
最たる例が、4-3-3採用時におけるMFの人選だ。開幕前、サッカーファンの多くがインサイドMFにマウントとグリーリッシュ、アンカーにデクラン・ライスを配した布陣を「ベスト」と推していた。しかし、サウスゲートは効果的なラストパスを供給するグリーリッシュではなく、インテンシティの高いディフェンスが売りのカルビン・フィリップスを抜擢した。中盤の構成力は著しく低下したが、守備強度は格段に増した。
プレースタイルにも、指揮官の志向が色濃く出ている。
ボールを奪われたら即時奪還を目指すものの、無理と判断すれば自陣まで素早く戻って守備ブロックを構築する。空中戦で異様な強さを発揮しているハリー・マグワイア、DFライン背後のスペースを自慢のスピードでカバーしているカイル・ウォーカーの奮闘もあり、準決勝までの6試合でたった1失点と堅牢な守備を見せている。