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生後18カ月で最初のスプリント、学業でも小学3年で飛び級…ムバッペが語る半生「早熟は苦痛でしかなかった」
posted2021/07/11 17:02
text by
パスカル・フェレPascal Ferre
photograph by
L’Équipe
キリアン・ムバッペ・インタビューの後編である。
ムバッペのスピード観、サッカー観を、パスカル・フェレ編集局長はさらに掘り下げていく。フェレの質問に答えて、ムバッペは早熟の才能を見出されたことが苦痛であったと告白している。
所属するPSGは、CLでは決勝を前に敗退しリーグ4連覇も逃した。また優勝が期待されたEURO2020もフランス代表はラウンド16でスイスに屈し、今年のムバッペはここまで失望ばかりを味わっている。フランス国民が待ち望むバロンドール受賞も、来年以降に持ち越しになるだろう。気になる将来については、あと1年で切れるPSGとの契約を延長するのかどうか、いまだに結論を出さずにいる。
22歳の若者は、どこに向かって疾走しようとしているのだろうか。(全2回の2回目/#1から続く・肩書などは掲載当時のままです)
(田村修一)
――スピードや素早い動きは、高いレベルでは不可欠と思いますか?
「もちろんだ。僕は試合をたくさん見ているけど、速い選手は本当にたくさんいる。でもスキルを伴わないスピードは何の役にも立たない。とりわけ高いレベルではそうだ」
――俊敏さに関してあなたとネイマールではどんな違いがありますか?
「ネイ(ネイマールの愛称)の方が僕より柔軟で、爆発力は僕が優っている。最初の加速は僕の方が速いが、ボールをキープしての方向転換では彼は唯一無二だ。一歩で方向を変えて相手のバランスを崩す」
考えるスピードこそが重要
――動作のスピード以上に考えるスピードが重要ではありませんか?
「僕もそう思う。脳が脚に指示を出すのであってその逆ではないからね。ボールを受けてから考えるのでは遅すぎる。僕のように常に誰かを背中に背負っている選手にとっては、情報の収集はとても大事だ。スプリント能力だけに満足していたらお終いで、予測なしにはスピードを生かせない」
――相手に予測されないために繰り返しを避け、プレーをより多彩にするにはどうすればいいのでしょうか?
「僕は自分のプレーを細かく分析している。相手も分析しているから、プレーの幅を広げるには分析は不可欠だ。いくらスピードがあっても、動きが予測できれば止めるのは難しくない。逆に予測できない動きをスピーディーにされると、ディフェンダーは常に危機に晒される。相手のコントロールエリアからも容易に脱出できる。ボールを呼び込む動きに関して、最も卓越していたのはブラジルのロナウドだ。動きとスペースの見つけ方はミリ単位で正確だった」