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日本人は本当に練習しすぎ? 「トレーニングを90分で収める」スペインと「練習は裏切らない」日本の大きすぎる差
posted2021/06/26 11:02
text by
佐伯夕利子Yuriko Saeki
photograph by
Getty Images
本稿は『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(小学館新書)の一部を抜粋、再編集したものです(全2回の2回目/前編はこちら)。
日本のスポーツ指導の問題は、私のようにフットボールの世界やスペインの事情しかよく知らない者が気軽に意見するものではないかもしれません。ただ、ひとつ気になったのは「練習時間が減ると、競技力が衰退するのではないか」という懸念の声です。
かくいう私も18歳でスペインに渡るまでは、サッカー、ソフトボール、ゴルフなどを、地元の少年団や部活動を通じて経験しました。日本のスタイルと、欧州のそれを私なりに比較することはできます。
では、28年間に及びスペインで指導者としてやってきた今、どう考えているか。
フットボールに関しては、練習すればするほどうまくなるような単純な競技ではないと思っています。
日本の子どもたちは本当に練習のしすぎなのか
スペインのフットボールは育成年代において優れた育成システムをもつといわれ、世界からも高い評価を得ています。ビジャレアルにも、膨大な数の指導者が世界中からひっきりなしに研修にやってきます。
「ビジャレアルでは、選手育成のために何か特別なことをやっているのか?」
そう尋ねられると、返答に困ってしまいます。秘伝の育成レシピがあるわけでなく、ただ「常識ある範囲で」「選手を最優先に」「(脳科学や心理学を含めた)科学的な根拠をもとに」指導を探索してきました。
これら3つを念頭に、ただただ日々精進あるのみ。他に特別なことはしていません。
では、スペインの子どもたちは日本の選手よりもより多く練習をしているのだろうか? もしくは、日本の子どもたちは本当に練習のしすぎなのか?
この疑問に対する解答は私にもわかりません。そこで、ビジャレアルの育成選手を取り巻く環境を数値化してみました。各年代のトップチームで過ごした例です。どの子どもも、スペイン各地でスカウトされたフットボールのエリート少年。青少年期をほぼフットボール漬けで過ごすため、スペイン国内でもフットボールに注ぐ時間が圧倒的に多いケースになります。