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史上初のEURO決勝トーナメント進出に沸くオーストリア 人口890万人の小国が築いた“生き残るための仕組み”とは?

posted2021/06/26 17:00

 
史上初のEURO決勝トーナメント進出に沸くオーストリア 人口890万人の小国が築いた“生き残るための仕組み”とは?<Number Web> photograph by Getty Images

史上初の決勝トーナメント進出を果たしたオーストリア。躍進の裏には選手を成長させる確かな仕組みがあった

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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 オーストリアがEUROで同国史上初となる決勝トーナメント進出を果たした。

 オランダ、ウクライナ、北マケドニアと同組のグループCで2勝1敗の2位。同国の『クローネン』紙は、その喜びを見出しに打った。

「歴史的! ありがとう! ヤーーー! 歴史に名を刻むことができた。みんな誇りに思っていることだろう」

自分たちが成し遂げたことに、ものすごく幸せを感じている

 開幕前は期待よりも不安の方が大きかった。フランコ・フォーダ監督には「せっかくの戦力を生かしきれていない」という批判もあった。確かに、ブンデスリーガをはじめ各国のトップチームでプレーしている選手が多いのに、オーストリア代表が見せるサッカーはどうにもぎくしゃくしているし、ミスも少なくない。

 例えば、初戦の北マケドニア戦と2戦目のオランダ戦ではキャプテンのダビド・アラバを3バックのセンターで起用した。本職はボランチで、所属先のバイエルンでは4バックの左CBか左SBでプレーすることが多いだけに、その起用法には疑問が集まっていた。

 代表仕様とはいえ、選手のクオリティを引き出せていないのではないか、と。フォーダ監督は「彼の持つ経験と統率力をあのポジションで発揮してもらいたい」と起用の理由を口にしていたが、はまっているとは言えないパフォーマンスだった。

 しかしグループステージ最終戦となったウクライナ戦で、フォーダ監督は決断した。システムを4-2-3-1へと変更し、アラバを左SBで、ホッフェンハイムのフロリアン・グリリッチュを中盤で起用したのだ。これがうまく機能した。

 前線でサポートの増えたマルセル・ザビツァーとクリストフ・バウムガルトナーは生き生きとしたプレーでチャンスを演出。全体的にバランスが良くなり、ボール回収から攻撃へ移るスピードが上がった。

 得点こそCKからバウムガルトナーが決めた1点止まりだったが、ゲームコントロール、チャンスメイクが格段に良くなった。

 1-0で勝利したオーストリアは、母国に歴史的な瞬間をプレゼントすることができた。試合後アラバは「自分たちが成し遂げたことに、ものすごく幸せを感じている。(グループステージ突破は)僕らの大きな目標だったんだ」と喜びのコメントを残している。

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ダビド・アラバ
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