オリンピックへの道BACK NUMBER
「渋野日向子さんと松山英樹さんで取り上げ方が違いますよね」 女性アスリートを“アスリートとして見ない”国内メディアの問題
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph bySachiko Horasawa
posted2021/06/25 17:01
井本直歩子氏は、ジェンダー平等を実現するために大きな役割を担うメディアにも、問題点があると指摘する
競技の内容に関する報道が十分でなければ
カーリングは5エンド終了後に7分間のハーフタイムがある。各チームはそれぞれに栄養補給などを行なうが、平昌五輪のとき日本女子代表のその光景が「もぐもぐタイム」として連日のようにメディアに取り上げられた。試合の内容はそっちのけで伝えるメディアもあった。
選手は会見で「これをきっかけに(視聴者がカーリングに)のめりこんでもらえれば。戦術も練りこんでいるので、そこも注目してほしい」と語ったが、競技の内容に関する報道が十分でなければ、その人気はどうしても一過性のものになりがちだ。
このように、えてして女性アスリートの場合、競技以外のことがメディアに注目されがちなのだ。今年の冬、数名の現役あるいは引退した女性アスリートに取材した際も、特定の選手のメイクについてばかりがクローズアップされることへの拒否反応を語っていた。
話題性のために容姿を取り上げることは否定しないが
「メジャーなスポーツでない場合、その競技を取り上げてもらうことは歓迎でしょうし、話題性のためにメディアが容姿などを取り上げることも否定はしません。需要があるのは当然で、報道の自由もある。でもその一方で競技性もきちんと取り上げてもらうようにしないと」
内容もさることながら、「タイトル」あるいは「見出し」のつけ方も、ジェンダーとかかわる問題がある。例えば、「美しすぎる〇〇」といった形容のあり方だ。当のアスリートからも、ときに違和感が語られる。
「女性アスリートを、アスリートとして見るべき。五輪の金メダル数は近年女性の方が多いんですよ。平等に扱って欲しい。ビジュアルや私生活といった競技と関係ないことばかり取り上げることはおかしいという議論をしていきたいですね」