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「これも差別だ、どうして耐えてきたんだろう」 給与、強化費、セカンドキャリア…日本スポーツ界に残る男女格差に“気づく”ということ
posted2021/06/25 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Sachiko Horasawa
4月28日、「今だから知っておきたい、ジェンダー平等の基礎知識」と題したオンラインセミナーが、また5月28日にはアスリートを対象にオンラインサロン形式で「スポーツ界におけるジェンダー平等の基礎知識」のセミナーが行なわれた。
初回には予定していた定員を大幅に超えるアスリートやスポーツ団体が参加し、2回目も各競技で活躍するアスリートが参加したという。
「反響も大きかったですし、何より参加した人たちの変化が目に見えて、それがうれしかったですね」
企画を立ち上げた1人、井本直歩子は語る。
ジェンダー平等が当たり前の海外で働いてきたから
井本は1996年のアトランタ五輪に出場するなど競泳選手として活躍。2000年に競技生活から退いたあとマンチェスター大大学院で紛争・平和構築の修士号を取得した。03年より、JICA(国際協力機構)でガーナ、ルワンダなどで活動したあと、国連児童基金(ユニセフ)の職員として各国で任務にあたった。休職して今年1月に帰国すると、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会のジェンダー平等推進チームのアドバイザーに就任。そして今回のセミナーの主体となった。
こうしたセミナー等の活動を始める契機となったのは、森喜朗氏の発言と、その後さまざまなメディアから取材を受けたことだった。
「(取材があったのは)おそらくは国際的な分野で海外で20年近く働いた者として、またアスリートとして発言する人があまりいなかったからだと思います」
取材を受ける中で自身に変化が生まれた。
「あの(森氏の)発言については最初の衝撃のあと、『昔と変わらないな』といったんは自分の中でおさまったんです。でも、このままにしていては変わらない、声を上げ続けなければいけない、と思いました。海外で、ずっとジェンダー平等が当たり前の環境で働いてきたからこそできることがあるんじゃないかと考え始めました」
アドバイザーに就任するとともに並行して友人らと勉強会を立ち上げ、セミナー開催へ至った。