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「箱根駅伝常連校」の変化、慶応と立教に“急激な成長”の予感? 「駒大一強」時代のレースに見た夏合宿前のチーム事情
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySatoshi Wada
posted2021/06/23 11:02
全日本大学駅伝関東選考会で日本人2位に入った東京国際大・丹所健(中央/4番)。同校は1位で本選出場を決めた
エース不在の中央大学は鬼門を突破
一方で、素直に笑顔を見せた学校もある。
5位通過の中央大学だ。
ここ数年、中大と全日本の相性は良くなかった。2018年はレース中の棄権者が出て出場ならず、2019年は17秒ほどの差で次点。2020年もコロナ禍で書類選考となり、これもまた出場を逃した。
4組目を走った三浦拓朗(4年/西脇工・兵庫)は手首にミサンガを巻いていたが、
「去年のキャプテン、池田(勘汰/現・中国電力)さんが『邪気は全部吸ってくれるから』と作ってくれたんです」
と語るほど、全日本予選会は鬼門だった。
今回の予選会では、日本選手権からオリンピックを見据える吉居大和(2年/仙台育英・宮城)、エースの森凪也(4年/福岡大附大濠・福岡)が出走せず、「飛車角落ち」という状態だったが、ほとんどの選手が上位でレースを進め、「強さ」を身につけつつあることを印象づけた。
これで全日本は、実に9年ぶりの出場となる。藤原正和監督は、ホッとした表情でこう話した。
「全日本の予選会は、ミスが許されない本当に厳しいレースです。これでやっと重い扉を開けることが出来ましたし、選手たちも吹っ切れたでしょう。実は、この予選会をターゲットに据えて、大学にお願いして、6月上旬に菅平で合宿をしました。この合宿を見て、吉居、森はいなくとも、突破は堅いと思っていました。ここをステップにして、夏にしっかりと走り込み、箱根駅伝予選会、全日本といいレースができればと思います」
立教と慶応は本選出場はならなかったものの
予選会においては、本戦には手が届かなかった学校にも見るべき点はある。
東京六大学から参加した法政、慶応と立教のうち、法政は3位通過。慶応と立教は通過ラインからは遠かったものの、1組目から順位を競っていた。
選手のリクルーティングに関しては、このところ立教の華々しさが目立っているが、慶応にもいい選手が入学している。
名門・九州学院(熊本)出身で、昨年の高校駅伝で留学生区間である3区で区間15位と健闘した田島公太郎は、最終組で30分19秒72。また、高校2年の時に1500mでインターハイ14位に入った安倍立矩(厚木・神奈川)は30分59秒67で走った。
3組目の安倍は、1周目で3番手につけ、積極的なレースを見せたが、
「あれ、こんな位置で走るつもりじゃなかった……と気づいたときは遅かったです(笑)」
と反省。聞けば、高校3年の時はコロナ禍でインターハイがなくなり、早々に受験勉強に切り替えて、理工学部に現役合格を果たしたという。
昨年の箱根駅伝の予選会でも、慶応は少しずつ上向いていた。今回の予選会でも、チームとしてはいい方向に向かっているように思える。