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【日本選手権】「レース前に伊藤達彦の動画を見ています」 Hondaの青木涼真、荒井七海は“リミッターを切った走り”ができるか?
posted2021/06/23 06:00
text by
加藤康博Yasuhiro Kato
photograph by
AFLO
Honda勢の活躍が目覚ましい。伊藤達彦が5月の日本選手権10000mで優勝し、東京五輪代表に内定。荒井七海も同月末のポートランド・トラックフェスティバルで1500mを3分37秒05で走り、17年ぶりに日本記録を更新した。遡れば2月のびわ湖毎日マラソンで土方英和が2時間6分26秒の2位。日本歴代5位の好記録を出している。
中でも伊藤は昨年から2度続けて大舞台でインパクトのある走りを見せてきた。12月の日本選手権では相澤晃(旭化成)と歴史に残るハイレベルな激闘を演じ2位。そこでは代表を決められなかったが、5月にはしっかり勝ち切った。本人が持ち味と言う「がむしゃらさ」は攻めの姿勢となってレースで現れ、見る者の心を揺さぶった。その存在に大きく刺激を受けているのが、伊藤と同期入社のチームメイト、青木涼真だ。
「昨年12月の(伊藤)達彦の走りは本当にすごかったと思います。レースの一番苦しくなる終盤で相澤選手に自分から何度も仕掛けている姿を見て、震えました。自分に足りないのはあの走り。今は自分のレース前にその動画を見て、気持ちを奮い立たせて走るようにしています」
「やっぱり達彦らしいレースでした」
東京五輪代表を決めたレースももちろん見た。「12月とは違う展開でしたが、やっぱり達彦らしいレースでした。プレッシャーのかかる中、自分からラストスパートで勝負を決めに行く姿を見て、“あいつ、やっぱりかっこいいな”と。しびれましたよ」
青木は日本選手権で3000mSCに挑む。昨年は3位で現在のベストは8分25秒85。今大会参加者中で4番目となる。東京五輪参加標準記録は8分22秒00だ。この種目では5月に日本記録、8分17秒46を出した三浦龍司(順大2年)の力が抜き出ているが、青木はどのレースでも安定して上位に入っており、三浦を追うグループのひとりだ。
だが安定感はあるものの、レースを自分から動かすことは少なく、強さを発揮するまでには至っていない。そこが伊藤との大きな違いであり、青木自身が求める走りでもある。Honda小川智監督も同意見だ。
「青木はとてもクレバーな選手。レースの中で最善の策を頭で考えてしまうんです。もちろんそれは大切なことですが、今のままだと突き抜けた結果は手にできません。大勝負をかけるときには感覚の部分もないとダメだという話をしています。達彦のような走りが今の彼には必要です」