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東京五輪日本代表、捕手・會澤翼の辞退がかなりの“痛手”であるワケ…北京五輪では星野監督の“猛抗議”で失敗した「審判問題」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAFLO
posted2021/06/18 12:20
2019年のプレミア12で優勝を決め、リリーフエースの山崎と抱き合う捕手・會澤
稲葉構想にとって痛手となることは間違いない
「會澤はインコースをうまく使えていたと思います」
大会後にこう語っていたのは侍ジャパンの井端弘和コーチだ。
「国際大会のアンパイアは日本に比べると外のストライクゾーンが広いので、どうしても外角中心の配球になりがちなんです。でも、外国のバッターってそれがわかっているから踏み込んで打ちにくる。外中心になりすぎたら、逆に絶対に打たれますから内角をどう使うかがリードのポイントだと思うんですね。そう考えるとプレミア12のときの會澤は、かなり大胆に内角を使えていましたね」
アンパイアの判定の癖やゾーンを把握した中で内外角を使い分けたリードができる。加えて捕手としてはなかなか打力もあるのだから、稲葉監督が會澤の招集に最後までこだわったのも分かるところだった。
「プレミアでの経験は大きいと思いますし、それを生かして今回選出した投手陣をリードしてもらいたいと思っています」
代表発表の席で會澤への期待を稲葉監督はこう語っていた。コンディションさえ整えば、主戦での起用も考えていたはずだが、その要が参加できなくなったのだ。稲葉構想にとっては痛手となる辞退であることは間違いのない事実なのである。
會澤の辞退で代わりのメンバーには梅野が招集され、代表の捕手陣は甲斐と梅野の2人体制になる。そこに外野手登録のソフトバンク・栗原陵矢捕手と日本ハムの近藤健介外野手もいざというときのスタンバイ要員として控える陣容だ。
もちろん甲斐や梅野では力量不足ということではない。甲斐の強肩と投手とのコミュニケーション能力の高さ、好調阪神の影の立役者と言われる梅野の捕手力の高さ、勝負強い打撃はどちらも主戦捕手となれる力の持ち主であることは言うまでもない。
ただ、普通の捕手力だけでは、一筋縄ではいかない。それも国際大会の怖さであり、難しさなのだ。
逆に言えば甲斐と梅野が国際審判員一人一人の癖をしっかりと把握して、その特徴を理解した上できっちり内角を使ったリードをできるかどうか。そういう視野の広さ、リードを意識できれば、會澤がいなくなった痛手も少なからずカバーできるはずなのである。
五輪での金メダルという日本球界の悲願達成には、會澤離脱というこのアクシデントをどうプラスに転じられるか。そこが1つの大きなカギとなりそうである。