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代表で5人抜けても21戦無敗… 小林悠とL・ダミアンの“競争・共存・協調”に見るフロンターレ鬼木采配の凄さ 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byEtsuo Hara/Getty Images

posted2021/06/08 17:02

代表で5人抜けても21戦無敗… 小林悠とL・ダミアンの“競争・共存・協調”に見るフロンターレ鬼木采配の凄さ<Number Web> photograph by Etsuo Hara/Getty Images

横浜FC戦でも2得点を挙げて勝利に貢献した小林悠。川崎フロンターレはJ1の頂をひた走っている

「刺激しあえる選手同士で、絆も感じますね。見ている方は頼もしい。自分も心強いですよ」

 両者の関係性については、自然とそんな笑みを浮かべる。

「どんなマネジメントをしているの?」の問いに……

 ただ本来ならば、エース級ストライカーの共存はデリケートな仕事だったはずである。ある時期に、「一体、どんなマネジメントをしているのか」と指揮官に尋ねたことがあるのだが、「いや、そんなにないですよ」と謙遜されてしまった。

 ただし、「2人とも片方がシーズンにずっと出ていれば得点王も狙える選手だと思います」と前置きした上で、両者がチームのために献身的に尽力していること、そして自分自身の確固たる起用法がある旨を明かしている。

「(選手は)調子の良い、悪いもあります。ただその中でも、連戦であれば、得点を取っていても次のゲームでは使わないこともあります。そこはカオル(三笘薫)もそうだし、選手からすれば受け入れがたいところもあると思います。特に、点を取ったFWに関しては。でもそこは、チームのためにという思いで全員が戦ってくれています」

「ゲームの強度を落とさずに戦うには」

 ゴールを決めたら、次も自分が先発で出て当然と思うのがFWである。

 FWにとっての得点は、次の得点を生む循環につながっていくからだ。しかし指揮官は、そうしたリズムにある選手も、連戦であればベンチに置く。試合に必要としているハードワークの強度を落とさないためである。たとえエース級のストライカーであっても、その扱いは変わらない。そして選手にとっては受け入れがたい起用でも、躊躇なく決断できるのが、鬼木監督の凄みなのだろう。

 そこは決して妥協しない。全てはチームが勝つためである。

「ゲームの強度を落とさずに戦うには、ローテーションになっても、我慢してやってもらっています。チームのために、強度を上げるためにも自分が出た時は頑張る。その姿勢が他の選手たちにも浸透していると思います。後ろの選手は『前線が頑張ってくれている』という表現をするので、そこは2人に感謝したいと思います」

 キックオフと同時に、勢いよくプレッシングをかけていくL・ダミアンの圧力は、もはや開始時の名物だ。その姿勢は小林悠も変わらない。常勝チームの最前線には、ハードワークを絶対に怠らない2人のエースストライカーがいる。そして指揮官は、そんな集団の手綱を決して緩めない。だから、川崎フロンターレは勝ち続けているのだ。

 絶頂期を走り続けているチームは、連覇を目指す天皇杯の戦いを9日に控えている。そしてその後、ウズベキスタンでACLの舞台に挑んでいく。

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