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代表で5人抜けても21戦無敗… 小林悠とL・ダミアンの“競争・共存・協調”に見るフロンターレ鬼木采配の凄さ
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2021/06/08 17:02
横浜FC戦でも2得点を挙げて勝利に貢献した小林悠。川崎フロンターレはJ1の頂をひた走っている
元ブラジル代表ストライカーの肩書きを持つ大物がやってきたのは2019年のことだ。シーズン序盤の鬼木監督は、4-2-3-1システムのワントップにL・ダミアンを、キャプテンでもあった小林を右サイドハーフに配置した布陣を重用している。
ワントップの座をかけて競争する関係に
ところが、前年まで不動の右サイドバックだったエウシーニョが移籍した影響もあり、小林のいる右サイド攻撃は思うように機能しなかった。
新加入選手とのコンビネーションを構築する作業から始まり、小林自身も持ち味が発揮しにくい状況に陥っている。結局、自らの得点感覚を取り戻すために、小林も主戦場をサイドではなく中央に戻している。そしてこの年の小林とL・ダミアンは、ワントップの座を巡って競争する関係になっていた。
あれから2年。
現在の両者がお互いをリスペクトし合う関係性を築いていることは、いまや誰もが認めているところである。1カ月ほど前のことだが、小林はこんな印象的な言葉を残している。
「ダミアンは人間的に素晴らしいし、リスペクトしている。もちろん、ライバルと思われますが、チームメートで勝ちを目指すところでは変わらないです。プレースタイルも違うので、お互いに良いところを出し合えれば、チームの勝利に貢献できると思っています」
表面的ではない2人のリスペクト
同様の言葉は、L・ダミアンからもたびたび発せられている。それが決して表面的な言葉ではないのは、ピッチで示す両者の関係性が雄弁に物語っている。
例えば、指揮官のJ1通算100勝目を飾った鹿島戦後。
劇的な決勝弾を挙げた小林は、ベンチから出迎えてきたダミアンに笑顔で飛び乗って抱きついていた。その数日前の湘南戦では、小林が退いた後にピッチに入ったダミアンが豪快なオーバーヘッドを決めて敗戦の危機を救っている。
お互いに「お前の分まで」と言わんばかりに貪欲にゴールを狙う姿は、もはやライバルではなく、助け合う兄弟のようですらある。直近のリーグ3試合を振り返ってみても、チームが記録した5得点は、2人が決めたものだ。
そんな共存関係を、誰よりも喜んでいるのが他ならぬ鬼木監督である。