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「ひとつの扉が閉じ、10倍大きな扉が開いた」アトレティコで円熟期のスアレスが語る闘将シメオネと盟友メッシ
text by
フローラン・トルシュFlorent Torchut
photograph byL’Équipe
posted2021/06/03 17:02
闘争心やプレーの激しさにおいて、スアレスはシメオネ監督と共通点が多い
――ここでの成功を実現するにあたり、ディエゴ・シメオネはどんな役割を果たしましたか?
スアレス 彼は偉大な監督で、クラブを替えて戸惑う選手に対して果たす役割は大きい。選手にモチベーションを与え、情熱を伝えて信頼していることを理解させる。バルサを去るときに僕はこう思った。「ひとつの扉が閉じたが、その10倍大きな扉が開いた」と。彼と話したときにそう確信した。バルセロナの監督(2014~17年)だったルイス・エンリケがそうであったように、シメオネは僕の獲得を熱望して全幅の信頼を示した。信ずるに足る指導者だとよくわかったから、僕も責任感を強く感じた。それはひとつのプラスだった。
――評判通りの厳しい監督ですか?
スアレス ああ、彼には強さと厳しさがある。試合でも練習でもそれが彼のやり方だ。ずっとそうだったし今も変わってはいない。
ウルグアイ人とアルゼンチン人に共通するメンタリティ
――言葉が同じなのも、理解を深める役に立っていますか?
スアレス もちろんだ。ウルグアイ人とアルゼンチン人は言葉だけでなくメンタリティも似通っている。だからよく分かりあえるし、ふたりとも気持ちが強い。
ある日、彼が僕をピッチから下げ、そのことで僕が怒っていると誰もが思った(12月9日、CLのザルツブルク戦。2対0でアトレティコの勝利)。でも、自己批判はしたが彼を糾弾する気はなかった。僕は自分には厳しい。自分の出来が悪くて交代させられたときには苛立つけど、それは監督が僕を代えたからではない。いろいろな思いが入り混じっての苛立ちだ。彼は厳しい姿勢で試合に臨む。その点で僕のメンタリティとも似ている。
――アトレティコでタイトルを獲得したら、それは特別の味わいでしょうか?
スアレス もちろん特別だし大きなプラスアルファだ。僕はこれまでアヤックスやリバプールでもプレーして多くのゴールをあげた。ウルグアイ代表でもそうだった。最近ではよくこう言われた。「バルセロナでゴールを決めるのは簡単だろう。パートナーにメッシがいてアシストをしてくれるから」と。今日、アトレティコでもゴールをあげ続けて、僕のパフォーマンスが再評価されていると思う。僕自身は自分がどれほどであるかよくわかっていた。僕がゴールを決めたのは、バルサで世界最高の選手と一緒にプレーしたからというだけではない。僕自身のクオリティによるものでもあった。