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「1週間500球」の球数制限問題…達(天理)と畔柳(中京大中京)の準決勝登板、“回避”させるべきでは?【センバツ】
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKYODO
posted2021/03/30 17:03
天理のエース達孝太。これまでの3試合で161球、134球、164球という球数にも注目が集まっている
達、畔柳は準決勝を登板回避するのが望ましいというのが個人的な意見だ。
天理、中京大中京がもし優勝を目指すなら、決勝の舞台で、彼らが投げられる状態にしておかなければいけないからだ。
畔柳は準決勝戦の投球数が121球までの制限となっているが、121球を投げられるからといって、登板をしてしまうと、決勝戦には尾を引く。制限のない達も同様である。
「1戦1戦、戦うことが目標ですが、高橋監督が現役の時にセンバツの決勝戦まで進み、その試合に勝ったのが天理で、負けたのは中京大中京だということは知っています。達投手はいい投手ですし、勝ち上がれば投げ合って勝ちたいというのはあります」
準々決勝終了後、畔柳はそう話している。
ただ、対決が実現したとしても、彼らが元気いっぱいに投げる姿を見たいか、何かに我慢をして歯を食いしばっている姿を見たいか……答えは一つしかないのではないか。
130キロしか投げられなくなった投手が打たれる姿を見たいか
1991年夏、沖縄水産高校のエースとして疲労骨折を押して決勝戦に登板し、その後の投手生命を失った大野倫さんは、こう語ったのものだ。
「甲子園で見たいのは、165キロを連発する大谷(翔平)くんのようなプレーであって、130キロしか投げられなくなった投手が打たれる姿ではない。ベストパフォーマンスのプレーが人々を感動させる」
達と畔柳が登板回避をして、東海大相模と明豊が勝つのであれば、それはチーム力が証明されたに過ぎない。東海大相模の門馬敬治監督や明豊の川崎絢平監督は投手起用に関してマネジメントを正しく行なってきたからその差が出ただけで、エース依存が敗退理由なのだ。
ただチャンスはまだある。
2人への依存を回避して、準決勝はチーム全員で勝ちに行く。
2人に課せられているのは一択の「決断」に違いない。