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モウリーニョに“解雇の噂”が…トッテナムにハマらない堅守速攻 もう「スペシャルワン」は幸せになれないのか
posted2021/03/28 17:02
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
「スペシャルワンと呼んでくれ」
2004年夏、FCポルトからチェルシーに着任したとき、ジョゼ・モウリーニョは自らを特別な人間であると称した。
「これからはハッピーワンだ」
2013年夏、6シーズンぶりとなるチェルシー復帰の際には、より近しい存在であることをアピールした。
“煽り合戦”はお手の物
セルフプロデュースに長けている。
「スペシャルワン」や「ハッピーワン」は、この男ならではの表現だ。朴訥なタイプの監督は万人受けするが、メディアのヘッドラインは飾れない。モウリーニョはヒールではあるが、その発言にメディアは食いつく。
「あの男はチェルシーを検索ばかりしている。まるで覗き魔だな」
2005年10月、モウリーニョはアーセナルのアーセン・ベンゲル監督(当時)を罵って平常心を奪うとともに、ロンドン・ダービーの興味を煽った。これは売り言葉に買い言葉であり、ベンゲルの発言──昨シーズンに比べると、チェルシーは信念を欠いている──に対する強烈なカウンターだった。
また、2010年10月には、「素晴らしいチームを数カ月でぶっ壊したのだから恐れ入るよ」と、自身の後任としてインテルを率いたラファエル・ベニテスをこき下ろしている。
批判された側は、たまったものではない。だからこそアンチ・モウリーニョも少なくはないが、ポルトガルの野心家は刺激的な発言で多くのメディアを惹きつけていた。
メディアに漏れ始めた“不満”
ところが、チェルシーに復帰して3年目を迎えた2015-16シーズンあたりから、怒りの矛先が、なぜか内部に向けられていくようになる。
2015年8月、負傷に倒れたエデン・アザールの治療にメディカルチームが駆け付けると、モウリーニョはメディアに不満を漏らした。
「ゲーム展開をまったく理解していない。アザールを治療している間、我々は数的不利に陥った」
内部批判はマイナスでしかない。
まして当時のメディカルチームには、エバ・カルネイロという美貌の人気女性ドクターが所属していた。モウリーニョの言動はパワハラにも等しく、2014-15シーズンのリーグ優勝でつかんだはずの人心が、瞬く間に離れていった。