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モウリーニョに“解雇の噂”が…トッテナムにハマらない堅守速攻 もう「スペシャルワン」は幸せになれないのか
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/03/28 17:02
EL敗退を受け、モウリーニョ監督に対する風当たりはさらに厳しさを増している。現地では早くも解任の噂も囁かれる中、“スペシャル・ワン”はこの逆境をはね返すことができるか
マンチェスター・ユナイテッドを率いた約2年半でも、モウリーニョはミスを犯した。
コンディションが上向かないルーク・ショーのことを「トレーニングに対する姿勢、野心、集中力など、話にならない」と全否定したのである。
「叱咤激励する意味だったと思う。モウリーニョには感謝しているよ」
ショーは意に介していないが、人の心に配慮しない発言で、モウリーニョはまたしても多くの選手、サポーターを敵に回してしまった。
2-0→2-3……ELの大逆転負けに怒り爆発
そしてつい最近も、怒りに任せた発言が物議を醸している。
「汗をかき、エネルギーに溢れ、身体中の血がたぎるような試合をディナモ・ザグレブは見せてくれた。彼らは勝者に相応しく、試合後に流した涙は美しくさえあった。
それに引き換え我々には重要な一戦であるとの覚悟がまったくなかった。一部の選手にとっては重要な一戦ではなかったのかもしれないが、私のキャリアと仕事を踏まえると、簡単な試合など1つもない。ハーフタイムに過信するなと厳しく伝えた。しかし、危機感が芽生えたのは延長に入ったあたりだろう。あまりにも遅すぎる」
ヨーロッパリーグ・ラウンド16の第2戦、延長戦の末にトータル2-3でD・ザグレブに敗れた後、公の席でモウリーニョは批判の矛先をまたしても選手に向けた。
指揮官の発言にも一理ある。
モチベーションが感じられず、所在なげにプレーしている選手も数人いた。守護神ユーゴ・ロリスも警告している。
「レギュラーの座を脅かすような選手が少ない。彼らは精神的にもっと強くなるべきで、もっと競争力をつけるべきだ」
この発言はトッテナムから一体感が失われつつあることを意味し、モウリーニョが信頼を寄せる者とそうでない者との間に軋轢が生じたのでは、と推測もできる。
だが、そうした不安材料を取り除くのも監督の仕事であり、公衆の面前における批判は賢明な解決策とは言えない。
不平・不満があるのならモウリーニョは選手に、選手はモウリーニョに直接言うべきだ。メディアをはじめとする第三者が介入すると話に尾ひれがつき、ネガティブな内容は安物のメロドラマのように急展開する。行きつく先は崩壊だ。