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モウリーニョに“解雇の噂”が…トッテナムにハマらない堅守速攻 もう「スペシャルワン」は幸せになれないのか
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/03/28 17:02
EL敗退を受け、モウリーニョ監督に対する風当たりはさらに厳しさを増している。現地では早くも解任の噂も囁かれる中、“スペシャル・ワン”はこの逆境をはね返すことができるか
トッテナムでは撃ち合いが得策?
さて、モウリーニョの主たるゲームプランは堅守速攻だ。
相撲に押し相撲と四つ相撲が、野球には投手力を軸としたチームと攻撃重視型があるように、サッカーにもカウンターとポゼッションがある。対極同士のせめぎあいは、見ていても心地いい。
したがって堅守速攻を否定するつもりは毛頭ないが、選手1人ひとりの個性を最優先に考えると、トッテナムはより攻撃的に振る舞ってしかるべきケースが多々ある。
第28節のノースロンドン・ダービーも重心が低すぎた。
ハリー・ケイン、ギャレス・ベイル、ソン・フンミン、エリック・ラメラ、ルーカス・モウラ、デル・アリといった攻撃的なタレントを擁しながら、29試合を終えて48得点。十分とはいえない。
「我々は十分すぎるほどの攻撃力を持っている。自分たちの特性を最大限に活かせれば、毎シーズンのように優勝争いできるっていう自信がある」
L・モウラが語ったように、攻撃的なゲームプランも組み立てるべきではないだろうか。とりあえず相手を止めるところから始めるのではなく、相手を追い詰める闘い方だ。
前述した火力を有しているのだから、たとえ対戦相手がマンチェスター・シティだったとしても、籠城より撃ち合いが得策だ。
解任報道も。スペシャル・ワンの行く末は…
「監督にもステップアップする権利がある」
2018-19シーズンのチャンピオンズリーグ決勝でリバプールに0-2で敗れた後、当時の監督だったマウリシオ・ポチェッティーノは口を滑らせた。
「選手に忠誠を誓わせながら、自分はよりよい条件を求めていたのか」と、誤解されても致し方ない。
以降、トッテナムのムードは崩れ、ポチェッティーノはチームを追われている。そんなときに現れたのがモウリーニョだった。
とはいえ、トッテナムのパフォーマンスが劇的に向上したわけではない。試合内容はむしろ低下し、チームのムードは「ポチェッティーノが解任されたときに酷似している」とさえ言われている。
要するに、人心が離れたのだろう。
リーグカップ決勝でシティを倒しても、モウリーニョの座は約束されていないという。リーグ戦でトップ4入りを逃せばなおさらだ。
ダニエル・リービー会長が、ユリアン・ナーゲルスマン(現ライプツィヒ監督)を後任としてリストアップ、との情報まで飛び交いはじめた。
監督就任、解雇に関する噂はシーズン終盤の恒例だが、トッテナムの実状を踏まえると、あながち“飛ばし” とも言い切れない。
いずれにせよ、モウリーニョの立場は危うい。リービー会長は、冷淡なビジネスマンとしても知られている。
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