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「7年間、毎日のように人種差別用語を」TikTokで大人気“レミたん”が明かす過去と“強いメンタル”【ハンドボール日本代表】
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byYukihito Taguchi/JHA
posted2021/03/10 11:03
ハンドボール日本代表で主将を務める土井レミイ杏利。TikTokでは190万人のフォロワーを抱えている
「僕が一番ふざけてるんですけどね(笑)」
「キャプテンだからとかそういうんじゃなくて、ただ勝ちたいだけ。もちろん、自分は海外を経験しているからと過大評価もしていない。むしろ、そういうものは一切出さず、ただ、チームの雰囲気が緩み、“これは一度締めないといけないな”と感じたときだけまとめたりするくらい。あとは、“あの選手が最近ちょっと調子悪そうだな“と気づいたときに声をかけたり。それもキャプテンだからではなく、常に人間観察をしているから気づいたこと。もし、その選手のために何か役に立てることがあるのであれば、という感じで」
人に何かを伝えるとき。その伝え方によっては、自分の意図とは異なる意味で受け取られてしまうことがある。そしてときには間違った認識につながることも。だからこそ、チームメイトに声をかけるときは、“伝え方”には十分に気を使いながら、トーン、タイミング、言葉使いなど、その時々の状況を分析しながら、適切に選んでいる。
また、伝え方を鍛えると同時に、「相手を敬う気持ちがないと自分の話を聞いてくれない。自分に不満を持っている人がいたら、どれだけ正しいことを伝えたとしても、聞こうとしない」と、人間性の鍛錬も重要だと痛感している。
「人間性といっても、そう言っている僕が一番ふざけてるんですけどね(笑)。ただ、みんなも僕もハンドボールに対しては“やる”と覚悟を決めて、熱い思いを持っている。その中で誰よりも戦っている姿を見せていくことで、みんなもついてきてくれるんじゃないかなと思っているんです」
「孫正義さんは尊敬。ただ…」
そんな彗星ジャパンのキャプテンが考える理想のリーダーとは。
「孫正義さんは人としても尊敬できますし、ユーモアもあって面白い方ですよね。ただ、僕はリーダーはこうでなきゃいけないという教科書はないと思っているし、それぞれのやり方があっていい。自分の中で大切にしているのは、リーダーが全員を引っ張っていくというよりも、みんなで一緒に歩んでいって、そのなかで臨機応変に軌道修正、サポートできるのが役割であり、理想なのかなと。ぼくだってなんでも全部できるわけではないですし、支えがあってこそやれている。リーダーとはみんなで築き上げていくものだと思っています」
キャプテンとして導くソウル五輪以来8大会ぶりの大舞台。ズバリ東京五輪への秘策を聞いた。
「チームとして成長していることは間違いないんですが、例えば、今回の世界選手権。予選ラウンドを突破したときに、結果を残さなければいけないという重圧から少し解放されて、気持ちの緩みを感じました。もちろん、難しいことではあるんですけど、やはりどういった状況でも強いメンタルを保ち続けること、気持ちをブレずに戦うことが大切ですね」
枯渇することのない欲求、ハングリー精神をさらに鍛えていけば、東京でいい結果が得られる。彼はそう信じている。
「TikTokを見て、来ました!」という観客で試合会場を満員にする日も、そう遠くはないかもしれない。