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25歳女王・大山千広が“ボートレース界のトップを狙い続ける”理由「自分が男だったらって思うこともあるけど…」

posted2021/03/13 11:01

 
25歳女王・大山千広が“ボートレース界のトップを狙い続ける”理由「自分が男だったらって思うこともあるけど…」<Number Web> photograph by BOATRACE振興会

2018年の最優秀新人、2019年のレディースチャンピオン獲得など輝かしい経歴を持つ25歳の女王・大山千広選手

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長田昭二

長田昭二Shoji Osada

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BOATRACE振興会

 女性の社会参画が進み、様々な業種や職場で女性が活躍するようになった。スポーツも同様で、従来は「男の世界」と言われた競技にも女性が続々と進出し、男性選手と対等の活躍を見せている。

 6艇のボートが600メートルの競走水面を3周走って順位を争う「ボートレース」もその1つだ。現在日本に1580人いるボートレーサーのうち女子選手は228人(2021年1月1日現在)。その数は年々増えている。

 女子選手だけで組まれるレースもあるが、男女が一緒に戦う混合戦の比率が高く、そこで女子選手が男子選手に勝利することも珍しくない。男性に交じって戦い、勝利し、高額の収入を得ることも可能な世界なのだ。

 そこで現在のボートレース界を代表する3人の女性レーサーに、「水上の格闘技」とも呼ばれるこの競技で、男性とは体力差があるにもかかわらず女性が活躍できる理由や、女性ならではの苦労などを率直に語ってもらった(全3回の1回目/#2#3へ続く)。

 史上最年少でレディースチャンピオンを獲得した大山千広。ボートレーサーの母(2018年に現役を引退した大山博美)を持ち、子どもの頃から職業として意識していたという。その経緯は現在放映中のボートレースのCMに養成所の生徒役として登場するハルカ(芋生悠)を彷彿とさせる。

「子どもの頃は、どちらかというと“冷めた子”でしたね(笑)。母の影響でボートレーサーへの憧れはありましたが、『何が何でも』というほどの強い思いではなく、『なれたらいいな……』くらいの淡い憧れ。

 ただ、母のことを『カッコイイな』と思っていたのは確かです。レーサーという職業が、というより『どの友達のお母さんとも明らかに違う母親』というところがカッコよかった。自慢でした」

レースで勝つための技術は「先輩に教わる」

 2014年に高校を卒業した大山は、福岡県柳川市にあるボートレーサー養成所に入所。厳しい訓練を経て翌15年5月にプロデビューを果たす。今でこそ2018年の最優秀新人、2019年のPG1レディースチャンピオン獲得など輝かしい経歴を持つ彼女だが、意外にも初勝利までには1年の歳月を要した。

「デビューしてすぐに1着を取る人もいる中で、遅いほうですね。だから初めて1着を取った時もあまり喜んでいる暇もなく、あくまで『通過点』という感じでした。そもそもデビュー戦(6着=最下位)のこともほとんど覚えていないんですよね……。何しろ一番の下っ端なので、ピットでの下働きが大変で(笑)」

 ボートレーサーを育成する養成所では、プロのレーサーにとっての基本中の基本しか教わらない。実戦で役立つ技術や知識はすべて先輩から教わるしかないため、水の上でも陸にいても、先輩後輩の上下関係が重要になってくる。

「先輩レーサーの艇番(ボートに取り付ける番号札)を揃えて並べたり、洗濯物を取りに行ったり……。そうしたお手伝いをする中で、レースで勝つための技術を先輩から教わっていくんです。

 積極的に先輩に聞きに行けたら良かったんですけど私はそれが得意なタイプでもなかったので、先輩レーサーのお手伝いに専念していました。でもそれを『つらい』とは思わなかった。部活の延長みたいな感じで捉えていましたね」

 他にもボートレースならではの意外な慣習を話してくれた。

【次ページ】 「恐怖の方が大きい」体感時速120kmの世界で

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