月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
「ゲリラが王道を制す」夕刊紙、タブロイド紙の野次馬精神が斬り込んだ「森喜朗辞任騒動」の本当の論点
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byKyodo News
posted2021/03/03 11:01
2月12日に辞任を表明した森喜朗氏。「女性が多い理事会は時間がかかる」発言から1週間あまりでの交代劇だった
『”独裁”の森 議論ゼロ異論威圧』(スポーツ報知2月12日)
どうぶつの森とはえらい違いです。複数の組織委理事が、森会長による理事会が機能していなかった実情を明かしている。会議のたった残り5分で「何かありませんか?」と言われたり、発言したら森会長から一蹴されたこともあった。
《ある理事は「何をお前は言ってるんだ、と言わんばかりの威圧的な雰囲気でした。その後、理事会で異論を言う人はいなくなったように思う」と振り返った。》(同)
突きつけられたのは日本的組織の体質
閉鎖性は今回のポイントだ。問題視されたのは男女平等だけではなく、活発な議論を否定する「日本的な組織」の体質そのもの(毎日新聞2月18日)なのであった。
デイリースポーツの【記者の目】(2月12日)は、
《常に舌禍の危険性をはらんできた森会長の物言いだったが、年明けから一層不安定さを増していた。明らかに歯止めが掛からなくなっていたトップの暴走を止められなかった組織委を含めた関係団体の責任は重い。》
2月2日の自民党会合では森氏は「コロナの状況がどうであろうと必ずやる」と強行開催を示唆した。あの時点でもうアウトだった。
日刊スポーツコラム「政界地獄耳」(2月19日)は、招致したおじさんたちと五輪の理念とのギャップを指摘。
《最初に東京五輪を招致して失敗した都知事だった石原慎太郎も森と同様、その差別的発言が幾度も物議をかもしたが、2人が今回の五輪招致で夢見たのは1964年の東京五輪の高度成長だ。》
《人間の、人類の成長が求められてたことを感づいた国民と64年の五輪に引きずられた国民がいたことが存在したことが森問題で明らかになった。》
人類の成長より経済成長。あの夢をもう一度という寝言。最初っからズレていた。そういえばアスリートファーストってどこへいったのか。
話が長くなりますので2月の話題はこのへんで。