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「ゲリラが王道を制す」夕刊紙、タブロイド紙の野次馬精神が斬り込んだ「森喜朗辞任騒動」の本当の論点 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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posted2021/03/03 11:01

「ゲリラが王道を制す」夕刊紙、タブロイド紙の野次馬精神が斬り込んだ「森喜朗辞任騒動」の本当の論点<Number Web> photograph by Kyodo News

2月12日に辞任を表明した森喜朗氏。「女性が多い理事会は時間がかかる」発言から1週間あまりでの交代劇だった

『東京五輪公式パートナーのANAを直撃!瀬戸大也は不倫問題で契約解除、森会長が女性蔑視発言でも支援は継続?』(2月10日)

 ゲンダイの言い分はこうだ。海外では一般人はもちろん、在日の欧州連合代表部や、各国の大使館がツイッターで抗議の投稿を行う異例の事態が起きている。なのに資金面で東京五輪を支えるスポンサーから「批判」や「辞任」を求める声などは聞こえてこない。

 というわけで、

《公式パートナーの一社であるANAは昨年9月、所属選手の競泳・瀬戸大也(26)の不倫問題が発覚した際、契約を打ち切った。不倫選手とは即座に契約解除しても、男女平等というオリンピズムの原則を無視する者が、大会の「顔」になっている東京五輪の支援は継続するのか。ANA広報部に聞いた。》

 ああ、ゲンダイ師匠の意地悪。切り口が下世話! いや、この視点は真っ当ではないか。

 ANAの正式な回答は以下。

「『多様性と調和』が東京オリンピック・パラリンピックの核となる精神の一つであります。その精神が尊重され、『コロナを克服した後の安心、安全な世界の象徴として』開催されることを期待しております」

 記事ではゲンダイ記者とANA広報部の会話が詳しく報じられていた。スポンサーに直接聞いてみるという、この時点では稀有な企画だったように思う。各スポンサーが声をあげはじめたのはこのあとだ。

「下世話」は時に王道を制す

 いかがだろうか。山口香にすぐに聞きに行った東スポも、大会スポンサーに直撃したゲンダイも、いつも通りに野次馬&下世話精神を発揮しただけかもしれない。だが今回はマスコミの王道感すらある。

 それはなぜか。

 東スポもゲンダイも五輪のスポンサーではない。全国紙ではガッツリと五輪スポンサーになってる新聞もある。もちろん批判もしているが夕刊・タブロイドのこのフットワークのあざやかさや切り口にはかなわない。そう見えてしまう。ゲリラが王道を制したのだ。

 朝刊スポーツ紙も読ませる記事はたくさんあった。

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