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原辰徳監督が明かす桑田真澄コーチ就任の真相「最初から彼が素晴らしい野球人だとは思っていなかった。でも…」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHINBUN
posted2021/02/27 11:03
キャンプでの練習終了後、ストレッチする桑田真澄・投手チーフコーチ補佐
「コーチ、監督も含めて指導者というのは忍耐力が非常に大事です。僕自身はコーチを40歳くらいで、監督を43歳くらいからやっていてね、やっぱり最初は結論から言いたくなる。何年かして、選手に話をさせる、あるいは聞く忍耐を持つことが、選手本来の良さを引き出し、あるいは欠点も見えてくることにつながると気づくんですね。でもそれを彼はプロの指導者になって最初から分かっているように見えます。動きの中でも選手の側にジーッといますよ。今日もブルペンで見ていると、例えばバッターボックスだとか余計なところには行かない。ずっと同じところからピッチャーを観察している」
――選手もそれだけ見られているというのは感じるでしょうね。
「それと喋り方が、僕みたいにペラペラペラっと喋らない(笑)。あの感じですから。俺は4拍子かもしれないけど、向こうは3拍子のワルツだからね! そこは選手にとっては違ったものを感じるかもしれないですね」
戸郷翔征、直江大輔をエースに育てるための人事?
――桑田コーチがスタッフに加わると聞いた時に、まず思ったことは戸郷翔征、直江大輔投手という同じ右投げの2人がターゲットかな、ということでした。彼らをエースに育てるための人事ではないか、と。
「もちろんそれはありますよ! 技術的なこともそうですし、何より桑田というのはデビューが15歳ですからね。15歳から脚光を浴びて、高校野球、プロ野球とずっとやって40歳くらいまでマウンドに立ち続けてきた。こんな人はいないですよ。そういう経験をしっかりと彼らに伝えて欲しいし、そこは大いに期待するところですね」
――戸郷や直江に何を伝授して欲しいですか?
「これは僕の固定観念もあるかもしれないですけど、やっぱり昔の野球があって、いまの野球、よく現代野球と言われるものがある。もちろんさまざまな環境の変化もあり、そこに合わせてアップデートしていかなければならない部分も当然ある。昔の野球に固執して立ち止まるのも、ある部分ではこれも悪です。でも根本的な質というか、変わっていないところは変わっていないとも思う。そういう部分をうまくミックスして伝えて欲しい」
全てはパ・リーグのパワー野球に対抗するために
――具体的には?
「例えば分業制というのは昔からある。しかしその一方で昔は先発が完投する。先発はまず完投、完封を目指して試合に入っていた。いまは分業制が先にある。7回になったらバトンを渡すことが先発の前提になっている。そういうのは嫌だな、違うなと思っています。分業制は昔からあったけど、先発投手のそういう本質的な強さというのを真澄も求めている。僕も求めています。この2年間、宮本もそういうものへのジレンマを持っていた。
しかし本当の意味でそのことを力強い声で伝えられるという点では、僕は真澄がうってつけだと思っている。それが先発は135球で完投を目指すというものだった訳ですね。ピッチャーだけではない。全てとは言わないですが、そういう強い野球を目指すのが今年の巨人です。そうしなければとてもパ・リーグの、ソフトバンクの野球に太刀打ちできない。そこを変えていくのが今年のジャイアンツの大きなテーマになります」
桑田コーチの加入も全てはソフトバンクを含めたパ・リーグのパワー野球に対抗するためのものだった。第2回ではそのチーム改革の具体的な姿を語ってもらう。
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