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原辰徳監督が明かす桑田真澄コーチ就任の真相「最初から彼が素晴らしい野球人だとは思っていなかった。でも…」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHINBUN
posted2021/02/27 11:03
キャンプでの練習終了後、ストレッチする桑田真澄・投手チーフコーチ補佐
「大塚(淳弘)副代表が二軍マネージャー時代から桑田との信頼関係があった。そこでまず、副代表に電話してもらって、それで僕が暮れの30日か31日だったかな、直接電話で話して1月の5日に会う約束をしました」
――就任はその場で決まったのですか?
「話は早かったですね。『僕は野球人として桑田真澄という存在が非常に気になる。あなたはジャイアンツのOBだし、選手に強い影響力を与えて欲しい。あなたの野球観、人生観、そういったものをスタッフの一員として思い切って選手たち……選手だけでなく私に対しても伝えてくれ、暴れてくれ』と話しました。それと『何かあったら必ず、全責任は私が取る。責任を持つし、応援もする。そこは心配しないでくれ』と話しました」
「お金の話、契約の話は一切しなかった」
――就任の条件とかそういう話は出なかった?
「お金の話、契約の話は一切しなかったですね。それでも彼は『嬉しい』と。それを素直に表現してくれました。桑田真澄というのはやっぱり私の思っていた野球人でした。実は私自身は、最初から彼が素晴らしい野球人だとは思っていなかったですよ。でも近年の彼の言動や様々な発信の中で、非常に彼自身がしっかりしたものを築き上げて、それを伝えられるようになっているというのを感じていました。もちろんジャイアンツには色々な立派なOBの方がいらっしゃいます。しかし今、このジャイアンツを次の世代へとつなぐ上で、秀でているのは桑田真澄ということです」
――彼の野球観、野球理論に原監督が共鳴する部分はどこですか?
「まず彼は色んな番組やメディアを通じて、高校生の投げすぎの問題や少年野球での過度なトレーニングの問題について反対の意見を言っていますよね。少年野球や高校野球の現状を知らない人は、プロ的な球数制限で選手を守るなんて、何を高校生に言っているんだという声もある。あるいは根性論も大事なのに、そういうものを度外視しているという意見もあると思います。そのことについて『どう思っている?』と聞くと『実は私はまだ身体が未完成の人たちに対して強い練習、強い投球、球数の多さはマイナスだと思っている。しかしプロ、あるいは身体が出来上がっている選手はボールを投げないとダメです。特に斜面で』という意見なんですね」
「真澄曰く、平面で投げるのはピッチャーじゃない、と」
――斜面で……マウンドでということですか。
「真澄曰く、平面で投げるのはピッチャーじゃない、と。そこの部分を彼は重視しているんですね。だから今は身体の出来上がっている投手が、試合で投げる球数が少ないと思っている。少なくとも135という球数は先発の義務、責任だろうと言っていました。そういう強い主張を話してくれたんですね」