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夫が育児と家事を受け持ってくれるからこそ、ブラジル男子柔道監督に… 日本人女性指導者に直撃インタビュー
posted2021/02/24 17:10
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
AFP/AFLO
2018年6月、藤井裕子さん(当時35歳)がブラジルの柔道男子代表の監督に就任したというニュースは、世界のスポーツ界に衝撃を与えた。
ブラジル柔道は、過去の五輪で金メダル4個、銀メダル3個、銅メダル15個、計22個のメダルを獲得しており、ソ連とロシアを同一国とみなすと世界8位。2016年リオ五輪では、金1個、銅2個の計3個で世界6位だった(いずれも男女合計)。
競技人口は200万人を超えるとされ、2位フランスの約56万人、3位ドイツの約18万人、4位日本の約16万人を大きく引き離して世界最多という柔道大国である。
世界のスポーツ界は男女格差が大きく、女子代表であっても監督は男性が務めることが多い。女性が男子代表の監督に指名されるのは、例外中の例外。メインスポーツの、それも強豪国となると、おそらく前代未聞だろう。
ブラジル柔道連盟、さらには国際柔道連盟がサイトや動画で裕子さんのことを大きく紹介。南米や欧米のメディアも、「若い日本人女性が、ジェンダーの壁を打ち壊した」、「男女格差に一本!」などと報じた。
夫が育児と家事の大部分を担当「家族ぐるみで職務を」
しかし、裕子さんは日本の反対側で女性としての幸せを捨てて孤軍奮闘しているわけではない。2013年、4歳年下の陽樹さんと結婚し、2人でブラジルへ渡航。清竹君(7)と麻椰ちゃん(3)を授かると、育児と家事の大部分を陽樹さんが担ってきた。
裕子さんは「私がこうして働けるのは、彼のサポートがあるからこそ」と感謝し、「私たちは家族ぐるみで職務を果たしています」と胸を張る。
外国のトップ選手を指導する日本人は多くないが、欧米人、中南米人には相当数いる。それでも、藤井ファミリーのようなやり方で10年近くに渡って奮闘する例は世界でも極めて珍しいのではないか――。