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小林陵侑「絶望しか感じられていない」不調も… レジェンド葛西紀明に並ぶW杯17勝、もがいて見つけた答え
 

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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posted2021/02/17 11:01

小林陵侑「絶望しか感じられていない」不調も… レジェンド葛西紀明に並ぶW杯17勝、もがいて見つけた答え<Number Web> photograph by AFLO

スキージャンプ日本の伝統を継ぐ小林陵侑。W杯17勝は葛西紀明と並ぶ偉大な成績だ

 今季の目標に掲げていたW杯1勝を手にし、次は2月24日から競技が始まる世界選手権に照準を合わせている。

次なる目標は“2年前に失速した”世界選手権での雪辱

 金メダルの最有力候補として臨んだ2年前の前回大会は、個人ラージヒル(LH)で4位、同ノーマルヒル(NH)はまさかの14位に終わった。男子団体で銅メダルを獲得したものの、本人は苦い記憶の方が鮮明に残っているだろう。特に個人NHは1回目で首位に立ちながら、2回目は激しい降雪の中で失速。報道陣の呼びかけに足を止めることなく、厳しい表情のまま会場を後にした。

 あの時の雪辱が懸かる大舞台を前に、小林陵は自身の立ち位置を冷静に見ている。

「まだ表彰台争いできる感じではないので。1本で1位に立てるとかいう力は、今のところないので」

「1本で1位に立てる」というのは、1回のジャンプの得点が全選手の中でトップになるという意味だ。今季初優勝を果たしたザコパネも、ジャンプの得点は1回目が4位、2回目は3位で、2回の合計点で1位になっている。高いレベルで安定感は出てきたが、以前のように他を圧倒する飛躍が戻ったわけではない。

「悪癖」を抑え込むことに成功すれば

 もう1段階上にいくためのカギは、踏み切る瞬間の動作にある。

 ここで我慢できず、先に上体が動いてしまうと下半身の力を十分に踏み切り台に伝えられず、飛距離のロスにつながる。2季前に勝ちまくっていた頃には自然と防げていたことだが、今は意識してもうまくいかないことがある。優勝した翌日に行われた個人第21戦は、我慢できず9位。作山憲斗コーチは「昨日が良かった分、やや力みも入っていて、ちょっと悪い癖が出たかな」。本人は「同じイメージでやっていても、違ってしまう感じ」と、もどかしそうだ。

 とはいえ、絶望の時を乗り越え、再び頂上争いに加われるまで復調したことは間違いない。世界選手権で「悪癖」を抑え込むことに成功すれば、W杯総合優勝と同じように価値のある「世界一」の称号を手にすることもできる。個人NHは2月27日、同LHは3月5日に予定されている。日本のエースの力強いジャンプを期待したい。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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