オリンピックPRESSBACK NUMBER
小林陵侑「絶望しか感じられていない」不調も… レジェンド葛西紀明に並ぶW杯17勝、もがいて見つけた答え
posted2021/02/17 11:01
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph by
AFLO
2月13日、ポーランド南部のザコパネ。ここが、小林陵侑にとって記念すべき場所となった。
午後4時、雪が舞う中で始まったワールドカップ(W杯)ジャンプ男子個人第20戦。1回目に136.5mを飛んで4位につけた小林陵侑は、雪が強まった2回目も134.5mと高いレベルで安定したジャンプを披露。左拳を強く握る姿から、満足感が伝わる。1回目の上位3人を残し、暫定トップに躍り出た。
「飛び終わってトップに立ってたんで、とりあえずは、って感じで。今までそういう場所で落としてたんで。今シーズンそういうことがあったので、今日はそれを更新できたのかなって」
ジャンプを飛び終えた直後の心境を尋ねた時に返ってきた言葉だ。
少し補足する。「今までそういう場所で落としてた」というのは、今季は1回目で好位置につけても、2回目で順位を落とすことがあったということ。「それを更新できた」というのは、「そんな自分を乗り越えられた」という意味だ。自らのジャンプに納得はしていたものの、優勝は確信していなかった。
「飛んだときは全て大丈夫」……葛西に並ぶ17勝
1回目は欧州の強豪たちが振るわず、上位4人のうち2人は珍しい名前が来た。
2位は今季初めてW杯表彰台に立ったボル・パブロブチッチ(スロベニア)、3位は個人戦で3位以内に入ったことがないアンジェイ・ステンカワ(ポーランド)。2回目で先に飛んだステンカワは133.5mまで伸ばしたものの、合計点で小林陵にはわずかに0.3点届かず。次のパブロブチッチは130mで、表彰台圏外となった。最後はハルボルエグネル・グラネル(ノルウェー)。今季初勝利を挙げた勢いそのまま、一気に10勝を挙げていた24歳だった。
1回目は、ヒルサイズまで1mと迫る139mまで伸ばし、小林に飛距離換算で約2.6m差をつけて首位。同じような飛躍がそろえば余裕で11勝目を手にすると思われた。しかし、グラネルはやや硬くなったのか129mと伸ばせず、7位に後退。小林の今季初勝利が決まった。
2014年11月、当時42歳だった葛西紀明が記録した日本男子最多のW杯17勝に並んだ瞬間でもあった。
「勝ててすごくうれしい。雪が降っていたけどコンディションは良かった。飛んだ時は全て大丈夫だった」