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親友に勝って金 小平奈緒が“韓国の女帝”李相花にかけた言葉「チャレッソ」の意味
posted2021/02/18 11:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Tsutomu Kishimoto/JMPA
3年前の今日(2月18日)は、平昌五輪スピードスケート女子500mで、小平奈緒選手が世界記録保持者で五輪2連覇の女王・李相花(イ・サンファ)との勝負を制し、金メダルを獲得した日。その激闘と、2人の知られざるエピソードを振り返ります。(初出:NumberWeb 2018年2月19日/肩書などすべて当時)
平昌五輪スピードスケート会場「オリンピックオーバル」は、満員の観衆で埋め尽くされていた。
2月18日のメインイベントはスピードスケート女子500m。
バンクーバー五輪、ソチ五輪でこの種目を連覇し、韓国で“女帝”と呼ばれている世界記録保持者の李相花(イ・サンファ)が、五輪3連覇の偉業を達成するか。
あるいは、'16年10月からW杯と世界選手権で無敗を誇る小平奈緒が強さを証明するのか。
韓国メディアが開幕前から分厚く報じていた注目のレースは、ハイレベルなタイムと友情に満ちあふれる一戦となった。
号砲。
先に滑ったのは14組の小平だった。オランダのプロチームでの武者修行中に、ともに汗を流したカロリナ・エルバノバ(チェコ)との同走。スタートこそ流れ気味になった小平だったが、最初の100mを10秒26の素晴らしいタイムで通過すると、得意のカーブで一気に加速していく。
会場に渦巻いた「イ・サンファ」コール。
バックストレート、2つ目の大きなカーブ、そして最終ストレート。
最後まで勢いを保ってゴールした小平のタイムは36秒94、五輪新記録だった。
会場はどよめいた。
しかし、そのどよめきは、すぐに「イ・サンファ」コールにかき消されていった。李は次の15組の登場だ。
李は得意のロケットスタートを決めた。最初の100mを全選手中最速の10秒20で通過し、バックストレートの伸びもまずまずだった。
しかし、最後にスピードが落ちた。