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小林陵侑「絶望しか感じられていない」不調も… レジェンド葛西紀明に並ぶW杯17勝、もがいて見つけた答え
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byAFLO
posted2021/02/17 11:01
スキージャンプ日本の伝統を継ぐ小林陵侑。W杯17勝は葛西紀明と並ぶ偉大な成績だ
「小林陵侑、トップに戻る」という見出しで国際スキー連盟(FIS)公式サイトに掲載されたニュースで、喜びの言葉が記されていた。競技を終えてホテルに戻った頃、LINE通話で心境を尋ねた。2019年12月のオーベルストドルフ大会以来となるW杯勝利だが、ここまで長かった?
「あ~、オーベルストドルフ以来だったんですね。いやあ、長かったですね」
「監督は監督でつらいこともあったと思うので」
葛西さんに並ぶ17勝。どんな気分?
「全く考えてなかったっすけど、言うとするならば、監督は監督でその時、その時のつらいこともあったと思うので、やっぱり尊敬しますね」
所属先の土屋ホームで兼任監督を務める葛西は今季調子が上がらず、W杯メンバーには入っていない。できれば17勝の喜びを分かち合いたかったか? 「陵侑、よくやったぞ」と言ってもらうところを見てみたかったが、本人としてはどう?
「あんまりないっすね(笑)」
取材後に書く記事で、分かりやすい師弟関係のストーリーにはめ込もうとしていた筆者の安易な思惑は、あっけなく崩れた。
スキージャンプもコロナの影響を受けている
「長かった」と小林が実感を込めた期間は、実にさまざまな出来事があった。
新型コロナウイルスの感染拡大によりシーズンが終盤に打ち切られた昨季は、W杯で3勝を挙げたものの総合連覇には届かなかった。コロナの影響は続き、昨夏は例年のように欧州の大会に出場できず、調整不足のまま冬のシーズンを迎えた。
W杯開幕後もすぐには調子が上がらず、昨年11月下旬に行われた個人第2戦のルカ大会は38位。本戦で2回目に進めないのは3季ぶりだった。12月中旬の取材中、ぽつりと漏らした言葉があった。
「いやあ、今んところ、絶望しか感じられていないですね」