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“観客数396人”は「仕方ない」のか… 棚橋弘至がどうしても鷹木信悟に勝たなければいけなかったワケ
posted2021/02/03 17:02
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
1.30愛知、NEVERというベルトのイメージに違わぬ激闘の末、棚橋弘至が鷹木信悟からベルトを奪取。初戴冠を果たした。
新日本プロレスの頂点であるIWGPヘビー級王座を史上最多の8度も戴冠している棚橋が、なぜIWGPと冠していないNEVERのベルトを欲したのか。
「20時イベント終了」は何を意味するか
現在、会場はとても静かだ。観客席は半分以上を空席にしなければならないし、声を出しての応援は禁止されている。それは、新日本プロレスであれば昨年7月に有観客試合を再開させてから変わっていない。だが、この1月シリーズはさらに厳しい状況が待っていた。
1.18の後楽園ホール大会は、396人という観客数にとどまった。
再び緊急事態宣言が出され、後楽園ホール大会は20時にイベントを終えるために18時30分開始予定の試合が18時開始に変わった。平日夜の30分の違いは、イベント開催に大きな影響を与える。
たとえばJリーグの浦和レッズは平日のナイトゲームで19時ではなく19時30分の試合開始を希望する。ファンが平日の夜に浦和美園のスタジアムまで足を運ぶことができるかどうかというのがこの30分で変わるからだ。
始まる時間も終わる時間も早まり、会場に足を運ぶことが難しくなったファンが増えた。会場で観戦することができたとしても、試合が終わった時には既に飲食店が閉店しており食事をして帰ることも叶わない。
観客396人は明らかに異常だった
これまで、ファンは色々なことを仕方のないこととして受け入れてきた。
有観客試合の再開に伴い、後楽園ホール大会のチケットは全席統一料金の8500円になった。8500円は通常であれば特別リングサイド、最も高い席の値段だ。しかしそれは、3分の1程度しか観客を入れられないのだから仕方のないことだ。
会場ならではのファンサービスの再開が不可能なことも仕方のないことだし、渡航制限や隔離期間の影響で外国人選手の参戦が難しくなるのも仕方のないことだ。移動のリスクも大きいためなかなか地方巡業が行われないことも、ビッグマッチが2日間に分かれてしまうことも仕方のないことだ。全ては仕方のないことで、試合を再開してくれただけで十分だ。
今は我慢の時。これまで元気を貰ってきたプロレスを、今は自分たちが支える番だ。
そう思っているファンは多かった。
ところが1.18、観客数は396人になってしまった。3連戦の真ん中で、しかも月曜日だったことを考慮しても、これは明らかに異常だった。コロナ禍でのこれまでの様子を考えても想像がつかない事態だ。今年も東京ドームを2日間使ってレッスルキングダムが開催されたが、そこではこの厳しい情勢の中でも1万2689人と7801人、約2万人を動員した。
396人という数字は、今年のドーム大会で一旦現地観戦に区切りをつけることにしたファンが少なくないことが目に見える形で表れたものだった。