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伝統業を営む両親の背中を見て…日本ハム4位細川凌平の「覚悟」がすごい! 小学生で“高卒プロ”を決めた理由
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2021/01/30 11:02
栗山監督直筆の「共に天下を」というメッセージを手に意気込みを語った細川凌平。小さい頃から憧れ続けたプロ野球の舞台でどんなプレーを見せるか
プロ野球が大好きだった細川にとって、子供の頃から“ドラフト”は一大イベントだった。高校入学後はさすがに練習のため見られなくなったが、それまでは毎年欠かさず中継を見ていた。中学校では陸上部に所属していたが、ドラフトの日は「すいません、今日は」と部活を休んで帰宅し、テレビにかじりついた。午後5時から6時まで1位指名を見て、その後30分間の休憩の間に軽く食事を済ませる。会議が再開されるとまたテレビの前に座り、家族が何を言っても動かなかった。
「全球団の育成指名まで、すべて終わるまで見てました。指名された選手を全員メモして、覚えるというのが毎年の僕の楽しみでした」と細川は野球少年の顔で笑っていた。
自身が当事者となった昨秋のドラフト前は、「自分が昔見ていたところで、名前が呼ばれることを想像すると……それはもう一番嬉しいですけど、不安や、いろんな感情が入り混じっています。希望を持つことはいいことですけど、人生、そううまくはいかないものだと思ってるんで」と複雑な表情を浮かべていた。
自分で「引退」を決められる選手に
ドラフト当日、細川は学校の応接室で両親とともに指名を待った。名前を呼ばれるまでの時間はじりじりするほど長く感じられたが、ドラフト4位で日本ハムに指名された。
記者会見に臨んだ細川は、「ここまで、お金や労力を使って自分のためにやってくれたので、ここからは自分が活躍して、元気な姿を見せて、親孝行ができたらいいなと思っています」と両親への感謝を口にした。
プロでの目標を聞かれると、こう語った。
「自分で引退ということを決められる、息の長い選手になりたい。そこに向けて、体の部分も、心も技術も磨いていきたい」
子供の頃から阪神ファンで、矢野燿大監督や金本知憲氏の引退試合を球場で見た際、「周りのファンの方々が泣いていたり、いろんな惜しむ声を聞いて、『将来自分はこういう選手になりたいな』と思った」と言う。
指名されたばかりで「引退」に触れる選手は珍しいが、細川にとっては、引退も含めて“プロ野球選手”なのだろう。