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マンUがひっそり停滞脱出? 混戦プレミアで首位、批判にも貫くスールシャール監督流“人心掌握術”とは
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/01/16 11:00
現役時代は頼れるスーパーサブとしてファーギー王朝を支えたスールシャール。彼の手によってついにユナイテッドが復権を果たすのか
この47歳のノルウェー人指揮官の穏やかなアプローチにより、19歳のメイソン・グリーンウッドを筆頭に、多くの選手が伸びやかに成長している。またポグバのように、士気にムラのあるセレブリティの扱い方も心得ているようだ。
クロップやペップと比べると戦術はまだまだだが
よく指摘されるように、戦術を構築する手腕は、まだ超一流とは言えないかもしれない。ユルゲン・クロップやペップ・グアルディオラのチームが披露するような、複雑な反復練習でコーディネートされたことを思わせる巧妙な攻撃の形はあまり見えてこない。
ただし現地の同業者によると、スールシャールは実に仕事に熱心で、代表戦の週に多くのスタッフが休暇を取り、監督の家族が母国に帰った時も、ひとりマンチェスターに残って自らのタスクに没頭していたという。ベビーフェイスの裏には、静かな闘志や向上心があるに違いない。
「フットボールは団結したチームこそが強い」
それに、フットボールは戦術がすべてではない。チームの戦い方を決める重要なファクターではあるが、それと同じくらい大事なものは、ほかにもたくさんある。たとえば、チームの一体感や高いモチベーション、ポジティブな姿勢など。それらは間違いなく、今のユナイテッドの強みだ。
バーンリー戦の前には、選手たちの自主性や絆の大切さについても、スールシャール監督は語っている。
「(選手たちが)コーチ陣からいつもあれこれ指図されることほど、悪いものはない。私は(現役時代に)、幸運にも多くの気概にあふれた選手たちのいるチーム(ユナイテッド)でプレーすることができた。(中略)チームには、グループで決めた事柄から逸脱してしまうような選手を正すリーダーが必要になる。フットボールでは、団結したチームより強いものはない」