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マンUがひっそり停滞脱出? 混戦プレミアで首位、批判にも貫くスールシャール監督流“人心掌握術”とは
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/01/16 11:00
現役時代は頼れるスーパーサブとしてファーギー王朝を支えたスールシャール。彼の手によってついにユナイテッドが復権を果たすのか
ポスト・ファーガソン期の7年間で獲得したタイトルは、FAカップ、リーグカップ、ヨーロッパリーグを一度ずつ。リーグ戦の最高成績は、ジョゼ・モウリーニョが指揮を執った2017-18シーズンの2位だ。
そのモウリーニョから約2年前に指揮権を引き継いだスールシャール監督は就任当初、不機嫌な前任者の澱が溜まっていたクラブの空気を一新し、チームも突如として息を吹き返した。指揮官交代の劇薬の効果は長く持続しなかったけれど、初のフルシーズンとなった昨季は終盤に猛烈に追い上げて、3位でフィニッシュ。そして今季は、不安定な序盤戦を経て、第8節から11試合負けなしで、ついに首位に立ったのだ。
この時期の首位は名将のラストシーズン以来!
ここ3試合はすべて1点差の勝利で、勝負強さも身につけているように見える。この時期に順位表のトップにいるのは、ファーガソンの最後のシーズン以来だ──その2012-13シーズンにはリーグ優勝を飾っている。
なにも後出しジャンケンをしたいわけではない。だがもし、この2年間に何度か経験した不調時のどこかで、本当にスールシャールを見限っていたとすれば、現在地に到達できただろうか。
個人的には、そう思わない。再び放浪していた可能性もあるはずだ。なぜなら、クラブはユナイテッドの流儀を肌身に知る有望なレジェンドに指揮を託したわけであり、その指針を失えば、また一からすべてを再構築しなければならないからだ。
「我々は今、ポールの最高の姿を」
「チームは日に日に良くなっている」と、スールシャール監督は12日のバーンリー戦(1-0の勝利)後、上機嫌に眉を上げて言った。そして、得意のしなやかなボレーで決勝点を沈めたポール・ポグバについて、こう話した。
「我々は今、ポールの最高の姿を堪能している。(今季序盤戦で)ポールは怪我や新型コロナウイルスに悩まされていたので、フィットネスが万全になるまで、相応の時間を要した。私は常々、ポールはチームの重要な選手だと言ってきた。ドレッシングルームでも、良いキャラクターを示しているよ」