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マンUがひっそり停滞脱出? 混戦プレミアで首位、批判にも貫くスールシャール監督流“人心掌握術”とは
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/01/16 11:00
現役時代は頼れるスーパーサブとしてファーギー王朝を支えたスールシャール。彼の手によってついにユナイテッドが復権を果たすのか
実際、この快進撃を支えたのは、守備のリーダーで腕章も巻くハリー・マグワイアの復調や、攻撃を見事に取り仕切るブルーノ・フェルナンデスの存在だ。
またクラブの象徴になりつつある生え抜きのマーカス・ラッシュフォードは、リーグ戦で7つの得点とアシストを記録しているだけでなく、英国政府の政治的決断を翻意させ、一度は取りやめになった低所得者層の子供達への食事券を維持させるなど、この1年で英国社会全体への影響力さえ持つようになった。23歳の主体的なロールモデルだ。
実は珍しい“リバプールとの首位攻防戦”
彼らが日曜日に乗り込むのは、王者リバプールの本拠地アンフィールドだ。今季のスケジュールが決まった時、ユナイテッドが首位でこの一戦を迎えると予想できた人はほとんどいなかっただろう。これほど楽しみなイングランド伝統のクラシックマッチは、いつ以来だろうか。意外にも、両名門が1位と2位の立ち位置で直接対決するのは、プレミアリーグ史上初だ。
「最高のテストになる」と指揮官は言う。疑われてきたスールシャールのチームの能力を証明する絶好の機会だ。
現状を見るかぎり、ユナイテッドにも勝機は十分にある。勢いは間違いなく上だし(リバプールはここ3試合白星なし)、そもそも今季のリーグ戦ではアウェーで一度も負けていない。負傷者の重なる相手には一線級のCBがひとりもいないし、敵を畏怖させるコップ(ゴール裏)の住人たちも、しつこい疫病によりスタジアムに入れない。
どこまでも欲が深そうなユナイテッドのフロント陣は好きになれないけれど、物腰が柔らかく、真摯で、人間として素敵に見えるスールシャール監督は応援したい。それにプレミアリーグをもっと面白くするには、やっぱり強いマンチェスター・ユナイテッドが必要だと思う。
日曜日の頂上決戦で昨季覇者に土をつけたなら、いつの日か、そこが復権のターニングポイントだったと振り返ることになればいい。