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マンUがひっそり停滞脱出? 混戦プレミアで首位、批判にも貫くスールシャール監督流“人心掌握術”とは
posted2021/01/16 11:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
気がつけば、マンチェスター・ユナイテッドがプレミアリーグの首位に立っている。ファンのいない静かな敵地ターフ・ムーアでバーンリーに1-0でしぶとく勝ち、混戦の上位陣からひっそりと抜け出した彼らの強さは本物なのか。
チームを率いるのは、少し前まで「力不足だ」とか、「戦術を知らない」とか、「更迭せよ」とか、方々で言われていたオレ・グンナー・スールシャール監督だ。もっともそうした声の大半は、SNS上でヒステリックに書き殴られていたものだけれども。
CLグループステージ敗退という事実は残るが
確かに今季のユナイテッドは、浮き沈みが激しい(でもそれはライバルたちにも共通していることだ)。
リーグ戦では開始からホームで4試合連続未勝利となり──なかには第4節でトッテナムに喫した1-6の大敗も──、チャンピオンズリーグではパリ・サンジェルマンとライプツィヒを相手に連勝スタートを切ったものの、同じ相手とのリターンレグに連敗し、まさかのグループステージ敗退。最終節のライプツィヒ戦では、引き分けで突破を決められる状況にありながら、ひどい守備から立て続けに失点を喫し、反撃も及ばずに2-3で跪いた。
チャンピオンズリーグの決勝トーナメントを戦わないのは、これで2シーズン連続だ。イングランドの最多リーグ優勝記録と飛び抜けた資金力を誇る名門クラブにとって、あってはならない状況と言える。
ただし、その責任のすべてを監督ひとりに委ねるのは、正しいことではない。特に、現在のユナイテッドにおいては。
御大ファーギー退任後、一貫性を欠いた監督人事
2012-13シーズンを最後に、サー・アレックス・ファーガソンが指揮官の座を降りてから、赤い悪魔は漂流を続けてきた(御大ファーガソンのとてつもない影響力と存在感、手腕を考慮すれば、それはある程度予想できたことだ)。アメリカ人オーナーと金融業出身のCEO──つまりフットボールを知らない人々──に主権を握られたクラブは、彼らの得意分野であるビジネス面では史上最高益を何度も更新しているが、肝心のスポーツ面では苦戦を強いられた。移籍市場での失敗は数知れず、監督人事にも一貫性を欠いた。