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実は日本人も入れる? “純血主義”を貫く古豪ビルバオ「最大の強み」とスカウティング7つの理念
posted2021/01/15 06:00
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph by
Athletic Club Bilbao
バスク人による、バスク人のための唯一無二のクラブ――スペイン・バスクのビルバオを本拠地とするアスレティック・ビルバオは、“純血主義”を貫くフットボール界でも希少な存在だ。
同じくバスク州を拠点とするレアル・ソシエダが、2002-03シーズンにシャビ・アロンソらスペイン人とダルコ・コバチェビッチ、ニハト・カフベジ、バレリー・カルピンら多国籍軍団の活躍でリーガを席巻しても、ビルバオの根幹は少しも揺るぐことはなかった。
基本的にはバスク人のみで編成するクラブ運営のため、当然ながら補強やスカウティングの面でも選択肢は限られる。そんな中でも、ラ・リーガで実に8度の優勝を誇り、レアル・マドリー、バルセロナと並ぶ降格経験がないクラブを作り上げてきた。そして、古くはホセバ・エチェベリア、イスマエル・ウルサイス、近年ではフェルナンド・ジョレンテやアリツ・アドゥリス、アンデル・エレーラ、ハビ・マルティネス、イケル・ムニアイン、アイメリック・ラポルトら世界的な名手を輩出してきた育成力にも定評があるのがビルバオの強みだ。
「外からみれば一見弱みと思われる私たちの指針は、実は最大の強みでもある」
メソッド部門のチーフディレクターを務めるアンドニ・ボンビン氏(38歳)はビルバオの特色をこう表現する。独自のスカウティング方法や育成理論まで古豪ビルバオに流れる源泉を読み解くべく、クラブを隅々まで知り尽くすボンビン氏へのオンライン・インタビューを行なった。
「限定」こそビルバオの強み
ビルバオとはどんなクラブなのか。私たちのクラブについて質問されたら、私は迷わずこう答える。「常に困難に立ち向かい、打ち勝っていく力を持つクラブだ」と、ね。
限られた戦力の中でメガクラブと戦い、降格をしたことがない。スペインのような国で、それを90年以上続けるのは非常に難しいミッションでもある。裏を返せば、集団の力が個人に勝るということをクラブが体現してきたともいえるね。バスクの血という純血性や理念が結束を高め、その限定性がチームの強みになっている。それが我々の強さの根底にある。
もう1つ、ビルバオに関わるすべての人間が自分たちは特別なクラブだということを強く認識しているということだ。あまり知られていないかもしれないが、かつてイングランドの労働者階級の人々がこの地に来て、チームを組んだことでクラブが誕生した。その後、バスクの人々が集い一部分を担うことになった。
そこからもわかる通り、ビルバオは小さな町クラブからスタートし、労働者階級の人々が深く関わっていたクラブともいえる。その歴史から多くのアイデンティティを得て、今でも小さな町の1つから始まった誇り、競争力を残しながらクラブ経営を続けている。