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棋士も俳優も「準備したうえでのアドリブショー」吉沢亮、中村太地七段が見つけた“意外な共通点”
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byNanae Suzuki
posted2020/12/25 11:05
若くして活躍する2人の特別対談。俳優の吉沢亮さん(左)と、棋士の中村太地七段(右)
吉沢 今まで将棋にちゃんと触れてこなかったので、こんなにがっつり将棋に向き合うのは初めてでした。でもやっぱり将棋って難しいですね。
中村 え、どんなところに難しさを感じました?
吉沢 駒の指し方、置き方1つとってもすごく難しかったです。(指して)こうやって滑らせて……。今ちょっと下手くそになりました(笑)。
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中村 ああ、仕留める感じですかね。お上手ですよ!
吉沢 とんでもないです。本当に細部まで美しさがある世界なんだなと。そういう意味でもやっぱり日本の伝統文化だなって思いましたし、美しさにこだわりながらあれだけの頭脳戦をするって、改めて、すごくカッコいいなと思いました。
ちょっとお聞きしたいんですが、やっぱり対局の前って「こういう流れでいこう」とかある程度組み立てて臨まれるものですか?
棋士も俳優も「準備したうえでの“アドリブショー”」
中村 そうですね。対局相手の得意な戦法とか、今流行している形をすべて踏まえて「相手がこうきたら、こうしよう」というのは頭に入れて備えるようにしています。ただそれ通りに進むことってほとんどなくて、いつも未知の対局になっています(笑)。だからといって、準備していたことが全て無駄になるということではなくて。その準備があとあと、思わぬところで活きるかもしれないなと、いつも思うようにしていますね。
吉沢さんこそ、演じる役柄も計算し尽くして表現されているんじゃないですか?
吉沢 僕も事前に台本をいただいて、ある程度自分の中でその役の人間性をなんとなく決めてはいるんですけど、いざお芝居が始まると相手との掛け合いのなかで決まっていくことが多いんです。相手がこうくるならじゃあこうか、というような。
中村 将棋の対局と似てますね。現場の瞬間瞬間で決まることが多い。
吉沢 僕もまさに似てるなと思いました。現場で生まれることの積み重ねですよね。やっぱり事前に用意したことも大事だけど、現場で生まれるものには勝てないというか。
あと、将棋も見てる側からすると、戦っている2人で作っている世界観を見せていただいているような気がするんです。お芝居もそうで、1人で作っているように見えて実は共同作業というか。
中村 たしかに。言われてみれば、将棋もお互いが準備したうえでの“アドリブショー”かもしれません。それが予期せぬ展開を生んで、見て下さる人たちの心を動かす対局になる。
将棋と芝居、何が違いますか?
――将棋と芝居には似ているところもありますが、一方で正反対な面もありますよね?