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棋士も俳優も「準備したうえでのアドリブショー」吉沢亮、中村太地七段が見つけた“意外な共通点”
posted2020/12/25 11:05
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Nanae Suzuki
芸能界と将棋界――厳しい世界で若くして活躍する2人の対談は、初対面の写真撮影から、“正解のない芝居”と“勝ち負けのある将棋”、俳優と棋士について話が進んでいく。(全2回の1回目/#2へ)
中村 初対面ですぐの撮影は、さすがに緊張します(笑)。
吉沢 中村さんは身長が高いですね。すっとしたたたずまいが棋士らしく美しいというか。
中村 いえいえ、吉沢さんこそ26歳だとは思えないほどの落ち着いた雰囲気とオーラがあります。いらした瞬間にパッと空気が変わったように感じました。
「将棋ってある意味ですごく狭い世界なんですよね」
――せっかくなので、将棋盤を挟んで“対局風”にしてみました。俳優と棋士として厳しい世界で活躍されている者同士、共通点などを語っていただければ。
中村 映画『AWAKE』拝見しました。すごく面白かったです。
吉沢 ほんとですか? 嬉しいです。
中村 将棋の世界ってちょっと独特なものがあると思うんです。言葉では言い表せないほど曖昧なことなんですが、吉沢さんの演技にはその曖昧なものが見事に表現されていました。
例えば、電王戦のラストシーン。英一(主人公)の後ろからカメラが入って、言葉もないけれど、背中で語っているというか。難しいキャラクターだと思うのに演じ切っていて。
吉沢 ありがとうございます(笑)。英一って、他にも興味あるものがたくさんあるし、やりたいこともあるはずなんだけど、自分には将棋しかないってずっと言い聞かせてきちゃった人間というか。そんな彼が棋士になる夢を諦めて、将棋ソフトと出会ったことで色んなものを得ていく。エンターテインメントなんですけど、成長物語なんです。
中村 将棋ってある意味ですごく狭い世界なんですよね。だからふと気づくと自分の価値観もどんどん狭くなっていく感覚はあって。僕はそれが嫌で大学進学を決めました。実際、すごく開けていく感覚があったんです。
でもそんな深いところまで将棋を理解されて演じられているとは、さすがですね。