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<全国高校駅伝>大迫傑、佐藤悠基…なぜ佐久長聖は名ランナーを次々に輩出できる?「テレビもゲームも禁止」 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byAsami Enomoto

posted2020/12/19 17:04

<全国高校駅伝>大迫傑、佐藤悠基…なぜ佐久長聖は名ランナーを次々に輩出できる?「テレビもゲームも禁止」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

佐久長聖の名物クロスカントリーコースで練習する選手たち。両角前監督が自らの手でゼロから整備した

 都道府県駅伝や春合宿などで佐久長聖の選手と寝食をともにすると、丁寧な挨拶はもちろん、掃除当番も決められている。食事をしていると、「ごはんはいかがですか」「お茶いかがですか」と常に気配りを欠かさない。また、荷物を持っていると「荷物を持ちましょうか」と声をかけてくる。

「すごいです、長聖の選手は。自分でアンテナを張りながら自分で動いていく」

 その話を高見澤に伝えると、苦笑しながらこう言った。

「特に、それをやれって言っているわけじゃないんですよ。でも、そういうことに気が付いて、動けるようになることは、社会に適応し、役立つ人間になるために必要なことだと思うんです。これは自主的というか先輩の姿を見て、聞いて、学んでいる部分が大きいですね。『先生のご飯がなくなったら聞くようにしなさい』と先輩から言われているようなので、そうして後輩に受け継がれていく。それが本校の伝統のひとつです」

 競技とは関係ない部分だと思われがちだが、高校時代のこういう気づきと行動が選手の視野を広げ、気遣いの出来る選手の下地になっていく。佐久長聖の選手が競技力だけではなく、個性的で人間力があるのは、伝統や先輩の言葉などいろんなことがベースになって育成されているからであり、だからこそ大学、実業団に行っても順応し、さらに伸びることができるのだろう。

高校最高記録(2時間02分18秒)の更新なるか

 佐久長聖は長野県で23年連続23回目の優勝を大会新記録で決め、都大路への出場権を獲得した。例年、レース前には各選手に「希望区間」を3つ書いて提出してもらう。それをできるだけ活かしながら高見澤監督が最終的に区間配置を決めていく。

「選手の希望区間と私の考えが一致した時は強いですね。ただ、私は今年で監督をして10年目になりますが、ベストオーダーで行けたことが一度もないんです。直前で故障者が出たり、調子が上がらなかったり。優勝した2017年もベストオーダーじゃなかったんです」

 果たして、今回の都大路はどうなるのだろうか。

 監督就任から10年目の節目となる都大路でベストオーダーが実現すれば、高見澤自身2度目の全国制覇が見えてくるだろう。そして前任の両角が監督時代の2008年、大迫傑、村澤明伸らを擁して樹立した日本高校最高記録(2時間02分18秒)の更新も見えてくるはずだ。

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