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ミュラーのような原口元気&レギュラー確保目前の室屋成 ブンデス1部昇格への生命線コンビに
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byAFLO
posted2020/12/20 11:03
ハノーファーで戦う原口元気(右)と室屋成。ブンデス1部昇格への闘いは続く
1人退場者を出した相手に後半はほとんどチャンスシーンを作れずに、逆に危ない場面を許す展開となったのはチームとしてはいただけないが、それでも原口の懸命なプレーを中心に最後までしのいで貴重な5試合ぶりの勝利をあげたのは本当に大きい。
原口の姿を見て、昨シーズンのハンブルガーSV戦を思い出した。当時はいい試合をしながら直近3試合で2度もロスタイムに失点して、勝ち点を取り逃すという嫌な流れの中で迎えた。あとちょっとで勝利、というところまで持っていきながら、最後のところでリードを守り切れず、後半アディショナルタイムにCKから失点を許して同点に追いつかれてしまう。
失望を押し殺して語った勝利への渇望
「(試合内容は)悪くなかったと思うし、よくみんなが走って戦って……」
試合後のミックスゾーンで怒りを飲み込みながら、失望を押し殺しながら、勝利を渇望する思いを止めることができずに絞り出した言葉が今でも印象に残っている。
でも、そうした経験が原口をさらに強くしているのだろう。そして主軸としての責任感がどんどん膨らんできているのだろう。
今季は試合後にコチャック監督やキャプテンのドミニク・カイザーらとピッチに残って長く話し合いをすることが多いと地元紙が報じている。コチャック監督のイメージするサッカーを体現できる選手として、原口なしのチームは考えられないほどの存在なのだ。
原口を経由するときの攻撃はスムーズだ
ハノーファーは全体としてまだ攻撃に難を抱えている。
流れの中でトラップすべきか、ダイレクトでパスを出すべきか――それがずれることがよく見受けられるのだが、原口は攻撃を落ち着けるべきときはボールを収めてコントロールし、相手守備にスキがあるときは素早くパスやドリブルで縦への攻撃を仕掛けていく。その辺りのバランスがやはり優れている。原口を経由した時の攻撃はとてもスムーズになるのだ。
とはいえ相手もそこを警戒してくるわけだから、そこを外した先でチャンスメイクできるところまでもっていきたいところだろう。だからこそ、室屋とのコンビには大きな期待がかかるところだ。
正直なところ、昇格を狙うチームとして12試合で6敗はやはり多すぎる。12節ボーフム戦は今後に期待を持てる試合運びだったのは間違いないが、ここで連勝できないとなかなか昇格争いに絡めないのも確かだ。それだけに年内最後となるレーゲンスブルク戦にはしっかりと勝利し、年明けリスタートにうまくつなげていきたい。