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W杯優勝・フランス代表のデシャン監督が明かす「能力よりも重視している」“代表選考の条件”とは
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byL’Équipe
posted2020/12/03 17:01
2019年11月17日のアルバニア戦では伝統的な4-4-2ではなく、3-4-1-2で勝負した
「あのときはポール・ポグバやエンゴロ・カンテといった主力が負傷していた。コランタン・トリソやフロリアン・トバン、ウスマン・デンベレ、サミュエル・ウムティティらロシアW杯をともに戦ったメンバーも、長期の負傷から復帰したばかりだった。予定通り6月にEUROが開催されていたら、誰を選ぶかは大きな問題だっただろう。
時間ができたので彼らをさらに観察できた。年末までに8試合あるからさらに多くの情報を得られる。春より今の方がずっと余裕がある。来年3月にEUROに向けて始動するときには、より多くの選択肢と解決策が得られると思っている」
――アドリアン・ラビオを代表に復帰させたのはいいタイミングではありませんか?
「そうしたことは常に考えている。誰を選ぶのがチームにとって最善であるのか。メリットはどこにあるのか。どうすれば次の試合に勝てるのか……。よく言われるように、それが私の実践的な側面なのだろう。
アドリアンはユベントスでいい状態にあるし、洋々たる前途が彼には開けている。ただ、多くの考えとは異なり、私は彼に対して何の決断も下してはいない」
――彼の復帰はブレイズ・マテュイディの欠場と関係がありますか?
「ブレイズはアメリカに行くという人生における別の選択をした。だから今回は選ばなかった。ムサ・シッソコには不安があった。同じことはコランタン(トリソ)にも言える。もし全員を選んでいたら、あのポストの競争はかなり激しくなっていただろう。W杯では彼かトリソかという選択で、つなぎ役としての能力を評価して後者を選んだ」
――ラビオにはどんな役割を期待しますか?
「彼は3人のMFの右か左で力を発揮する。アンカータイプではない。CLのリヨン戦でも左よりでプレーしていた。そこから先はポール(・ポグバ)と同じで、ダブルボランチでもプレーできるかどうかだ。アドリアンはポールに比べ得点が少なく、決定的な仕事もあまりしない。ポールと同等の推進力と技術を持っていても、彼ほど攻撃的ではない」
コロナ禍における“代表選手に必要な条件”
――競争はさらに激しくなるということでしょうか?
「それは以前も同じだ。一日でチームの中心やリーダーにはなれない。ともに過ごす時間が少ない今の状況では、本質により近づいていること――ピッチの上でやるべきことを即座に実践し、フランス代表が組織としてどう機能しているか、どんな生活規範に則っているかを理解した選手が求められる。
計算するとこうなる。年末までに10日間ずつ3度選手を集められる。しかし移動と試合後の回復の時間も不可欠で、強度の高い専門的な練習を全体でおこなえるのは全部で10回がいいところだ。
ただ、扉は常に開かれている。チームに何かをもたらせるし、伝えるべき言葉を持っていると判断したら、私はその選手をチームに加える。生年月日を気にしたことは一度もないし、グループの緊張感を維持するために内部の競争を作り出すよう常に留意している。2016~18年の2年間に、13人が新たにグループに加わった。EURO2016では決勝に進んだにもかかわらず、それだけ多くがグループの一員になり様々な部分がレベルアップした」