フランス・フットボール通信BACK NUMBER
好調のフランス代表・デシャン監督に聞く「W杯チャンピオンはコロナ禍をどう乗り切っているのか?」
posted2020/12/03 17:00
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph by
Pierre Lahalle/L’Équipe
フランス代表が好調である。コロナ禍による長期中断の後、新たに始まったシーズンは8試合をおこない、ホームの親善試合でフィンランドに敗れる番狂わせはあったものの6勝1分1敗の好成績で年内の日程を終えた。ネーションズリーグもポルトガル、クロアチア、スウェーデンを相手に5勝1分と、ベスト4に進んだ4チーム(他はイタリア、ベルギー、スペイン)では勝ち点16のトップで勝ち上がった。
時間は少々遡るが、『フランス・フットボール』誌9月1日発売号ではディディエ・デシャン・フランス代表監督のロングインタビューを掲載している。コロナ禍の長い中断期間をどう乗り切ったのか。どんな不安を抱えながら、どういうアプローチで新しいシーズンに臨もうとしていたのか。すべての結果が出た今から遡ってひとつひとつの言葉を吟味することでわかるものもある。
前後編の2回にわたるデシャンインタビューの第1回は、中断期間に彼が何を考え、何をしていたかをパトリック・ウルビニ記者に語っている。(全2回の1回目/#2へ)
(田村修一)
カタールW杯では世界一に……
――活動を停止してから10カ月がたちましたが、今、フランス代表にどんな気持ちを抱いていますか?
「10カ月は長い。長すぎる。これほど長い間、何もしなかったことはかつてなかった。だから大きな渇望とエネルギーが私にはある。クレールフォンテーンに帰って来て選手やスタッフと再び顔をあわせるのは、たとえ特殊な状況下であろうと大きな喜びだし興奮を禁じ得ない。
今年の春からコロナが生活の優先順位を根本的に変えた。本質的なものを優先しなければいけない状況で、サッカーが片隅へと追いやられるのは仕方のないことだ。大事なのは生活や家族であり、充足であるからだ。そして今、ようやくマシンを再稼働するときがやって来た」
――そうはいっても不安や不確かさを感じているのではありませんか?
「私は生来ペシミストではないから不安は感じない。これまでも確信を持っていたわけではないが、今はさらに不確かになっている。本当に特殊な状況だ……。選手がどうなっているか、特にフィジカル面の状態をまず知りたい。こんな状況だから、9月、10月、11月を超えた遠い先まで見通すことなどできない。
ただ、だからといってゼロから再スタートというわけではない。これまでわれわれが築いてきたものがすべて無になったわけでもない。選手たちはこれまでの蓄積をさらに豊かにしたいと願っているが、現状ではすべてのメーターがゼロを指している。次のカタールW杯までフランスには世界チャンピオンとしてのステータスがあるが、同時にチャンピオンへの期待や要求も高い」
――困難な時期をどう過ごしましたか?