野球のぼせもんBACK NUMBER
原監督「39秒」対工藤監督「7分29秒」の差 巨人番記者は「あんな投手、セ・リーグにはいない…」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/11/23 17:03
7回1死満塁でダメ押しの満塁本塁打を放ったデスパイネ
巨人番記者「あんな投手、セ・リーグにはいない」
いや、大方の予想をひっくり返そうとするならば、ただジャイアンツが勝つという結果だけでは足りなかった。競馬でいえば万馬券を的中させる必要があった。菅野智之の好投。それでは中穴だ。大穴をあけるとすれば、ジャイアンツ打線が千賀滉大を打ち崩すことだった。
最大の焦点だと思っていた千賀とジャイアンツ打線の対峙。
千賀が圧倒的な力でねじ伏せて完勝した。ジャイアンツ打線は対策を練って、それをしっかり実行していた。千賀のフォークボールをことごとく見極めてみせた。低めを捨てていたのか、「何か」を分かっていたのかはともかく、千賀としてはフォークが使いにくい状況に確実に追い込まれていた。
当然のごとく直球の割合が増える。そのストレートを狙いに行ったジャイアンツ打線だが、まるで仕留めきれなかった。なじみの巨人番の記者数名はいずれも「あんなに速くて、強い真っ直ぐを投げてくる投手はセ・リーグにはいない」と呆気にとられていた。この日の最速は159キロ。打者26人と対戦して、勝負球がストレートだった打者は17人だった。15打数1安打2四球4三振。「浮き上がってくるようなストレートを投げていた」と話すジャイアンツの打者もいた。
味わい深い甲斐のリード
また、マスクを被る甲斐のリードも味わい深かった。
昨年の日本シリーズでは坂本勇人を「一番注意する打者」と決めて、初戦の第1打席では6球中5球を内角にミットを構えた。また、丸佳浩に対しても徹底的に内角を要求した。一方で、岡本和真は外の変化球で翻ろうするというのが、昨年のパターンだった。
今年のシリーズ前。当然、どんな策を講じるかなど口を割るはずはないが、「日本シリーズというのは“つながり”を持ってやるのが大事」とは話してくれた。
そこで今年の第1戦の入りに注目をしてみると、坂本に対しては外角中心で、岡本には内角攻めをするという昨年と逆パターンの配球をしていた。坂本は最終的にやや内寄りのフォークボールを空振り三振したが、追い込まれるまでの外目の直球で完全に混乱したようなスイングだった。そして岡本は内角の154キロ直球でバットを粉砕され、キャッチャーファウルフライだった。また、丸には両サイドを上手く使って攻めて、最後はインコ―スの159キロ直球での見逃し三振だった。
先述したように、甲斐は工藤監督からの「抑えてくれる方に集中してくれれば」のリクエストに、十分すぎるほど応えてみせている。