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ハーランドは一見、近所の中学生だが…“若き超高速軍団”ドルトムントはバイエルンを倒せるか
 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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posted2020/11/16 06:00

ハーランドは一見、近所の中学生だが…“若き超高速軍団”ドルトムントはバイエルンを倒せるか<Number Web> photograph by Getty Images

昨季、ザルツブルクとドルトムントで強烈な輝きを放ったハーランド。若き新星が居並ぶドルトムントは今も魅力的だ

バイエルンとしては痛いキミッヒ離脱

 バイエルンは、今回の「デア・クラシカー」でキミッヒが膝を負傷し、約2カ月の戦線離脱を余儀なくされた点が懸念されます。チアゴがリバプールへ移籍したことでMFの人材不足が囁かれていたバイエルンにとっては緊急事態です。

 こちらのメディアでは、キミッヒの代役としてトリソ、ハビ・マルティネスに加えて、今季パリSGから加入した18歳ニアンゾの抜擢も取り沙汰されていますが、ニアンゾがチームの中核であるキミッヒの穴をどれだけ埋められるかは未知数でもあります。

  また、ディフェンスラインの要と言えるアラバとの契約交渉が上手く進んでいない点も不安です。

 オーストリア代表のアラバは2010年1月にバイエルンのユースチームからトップチームへ昇格して以来、リーガ272試合に出場。今回の「デア・クラシカー」で自身200勝目を挙げた、文字通り近年のバイエルンを支えてきたレジェンドです。

 そんな彼が来年6月末に契約満了でチームを去ることになれば、築き上げられてきたバイエルンの「国内常勝」の立場が揺らぐことにもなりかねません。

 常にトップであり続けるための責任と義務を背負うバイエルンに対し、その背中を追うドルトムントには若さ故の野心と躍動感が息づきます。3-2でバイエルンが勝利した今季の「デア・クラシカー」第1戦を見ても、例年通りの「1強時代」と判断するのは性急だと思います。

「でも、この子、中学生の……」

 試合翌日、僕の住むアパートメントの大家のおばあさんが、いつものように朗らかな表情を浮かべながら新聞の切り抜きを渡してくれました。

「昨日もバンヤン(バイエルン)が勝ったんですって。もう、毎年同じなんだから優勝でいいんじゃない? でも、この子(ハーランドを指しながら)。近所の(中学生の)◯◯くんに似てない? えっ? 違うの?」

 サッカーにさほど興味のないドイツのご年配に、アーリング・ハーランドという存在が認知されたことは、輝ける未来への確かな一歩。コロナ禍のブンデスリーガにも、新たな息吹がもたらされていると感じます。

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