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ハーランドは一見、近所の中学生だが…“若き超高速軍団”ドルトムントはバイエルンを倒せるか
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/11/16 06:00
昨季、ザルツブルクとドルトムントで強烈な輝きを放ったハーランド。若き新星が居並ぶドルトムントは今も魅力的だ
バイエルンとの対戦成績は厳しいが
ドイツにおける「デア・クラシカー」は、リーガを牽引するバイエルン・ミュンヘンとボルシア・ドルトムントの対戦を指し、主に2010年以降は両者の対戦成績がリーグ優勝の命運を左右するとして注目されてきました。
今回の一戦までの両者の通算対戦成績は、バイエルンの48勝29分25敗。やはり盟主と称されるディフェンディングチャンピオンに分があります。
そもそもバイエルンはリーガ8連覇中で、昨季は国内カップ戦のDFBポカールに加えてUEFAチャンピオンズリーグでも頂点に立ち、7年ぶりの3冠を成し遂げたスーパークラブ。このチームから勝利を挙げるのは困難を極めます。
とはいえ、今季に関してはドルトムントの奮闘を期待していました。第7節で対戦するまでの両者は共に6勝1敗の勝ち点15でトップ2に君臨していて、バイエルンは5試合で24得点、ドルトムントは5試合で2失点。得点数と失点数でトップの数字を刻む、まさに盾と矛の力を誇示していました。
またドルトムントは若手の躍進が目覚ましく、20歳のエースFWハーランドを筆頭に、MFサンチョ(20歳)、MFレイナ(18歳)、MFベリンガム(17歳)、MFヘイニエル(18歳)、DFモレイ(20歳)ら、20歳以下のヤングスターが群雄割拠。ブンデスリーガの出場年齢制限により「デア・クラシカー」に出場できなかったものの、15歳のFWムココも控えるフレッシュな陣容です。何だかワクワクしますよね。
恐ろしく速い動き、パス、シュート
実は、この大一番の前節に行われたビーレフェルトvsドルトムントを現地で観ました。目的はビーレフェルトの日本代表MF堂安律だったのですが、この眼で見たドルトムントの選手たちのプレーに釘付けになってしまいました。
ピッチに立つ11人のプレースピードが、恐ろしく速いのです。それは単純なランニングスピードだけではありません。パスは受け手の足にバシンと音がするような強さで入り、次のプレーへ移る判断もとてつもなく迅速。そしてシュートは低弾道かつ高速、各選手がゴムまりのように跳ねながらピッチを蹂躙していきます。
かつて、イビチャ・オシム監督は「走るスピード、考えるスピード、そして反応のスピードが大事だ」と説きましたが、現在のドルトムントは「スピード・フットボール」を体現しているかのように見えました。