セリエAで働く「正社員」の年収は？ 氷河期世代もビックリの“超難関”イタリアサッカー就活事情

「求む企画営業部正社員」。1年ほど前、ビジネス系SNS経由で求人情報メールが届いた。いつもならスルーだが、求人先が「ユベントスフットボール株式会社」とあれば即チェックするしかない。

　職務内容はクラブのブランディングやデジタル展開、イベント運営管理等。気になるのは応募の必須条件だ。最初の3つはクリアできても、最後でハードルがいきなり10m高くなる。

・経済学修士もしくはそれに準ずる学位
・週末拘束と国内外出張に対応可能であること
・ネイティブレベルの英語力
・国際的企業での新規顧客開拓の実務経験数年

　選手としては無理でも、欧州のビッグクラブで社員として働きたいと考える学生は世界中にいる。ただし、この手の求人は表に出ること自体稀で、大所帯のビッグクラブでは、往年の有名選手やスポンサーの子息のコネ入社は珍しくない。

「最初の1年は全くの無給だった」

　フランチェスコ・バッレージという男がいる。8月までベローナのオペレーション・ディレクター、日本風にいうなら営業部長兼総務部長兼取締役というべき要職にいた。16年前、中村俊輔がいた頃のレッジーナで働き始めた彼のキャリアは叩き上げそのものだ。

「インターンの願書をクラブに送ったが返事がない。直接訪問しても8日も門前払い。9日日の朝、意を決してPCを持ち込んで『会長からマッチアナライズを頼まれて』と嘘ついたら、ビゴンSD（現ボローニャ）が入れてくれてね。それから英文書翻訳から外国人選手の世話まで何でもやった」

　最初の1年は全くの無給。2年目の給与もたったの月額500ユーロ。「でも俺は世界一幸せな男だったよ」。彼はそこで育成部門に目を向けながら実務経験を積み、10年秋にビゴンの伝手を頼ってナポリヘ。弱冠28歳で育成部門総責任者になり、UEFA会議でスピーチしたのが縁で14年夏にベローナからヘッドハンティングされた。伝統あるクラブのNo.2にまで上りつめたが、今夏、ベローナと契約を円満解消。今は自身の会社を興そうか思案している。17歳からの夢だからだ。

　ユベントス株式会社へ入社するのに“新卒カード”は役に立たない。むしろ経験者しか挑めないという意味では、欧州ビッグクラブヘの門は、いつでも誰にでも等しく開かれている。